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 第697回 ジャガイモに注目!

(2015年11月30日)

2015年1月、北京でジャガイモ主要食糧化発展戦略検討会が開催され、ジャガイモをコメ、コムギ、トウモロコシに続く第4の主要食糧に位置づけ、国家の食糧安全保障レベルを向上させよう、という動きが活発化しました。世界銀行によれば、2014年時点で中国の食糧総需要は6億トン、国内生産量で食糧が不足というわけではありませんが、2020年には6.7億トンが必要で、それに見合う生産性の向上と耕地の確保が必要不可欠です。
現在、中国の耕地面積は世界の耕地の10%未満。水不足の上に、既に世界の化学肥料の1/3を使用、単位耕地面積当たり農薬使用量は世界の2.5倍で、土壌汚染、地下水の水位低下も深刻です。一方、ジャガイモは寒さや乾燥に強く、土地・肥料・農薬の節約に有効な上に、コメやコムギに比べ水の必要量も少なく、年間降水量350ミリ以下の西北地域や、汲み上げ過ぎで地下水位の低下に悩む華北地域でも栽培が可能です。更に南方地域では冬の農閑期の遊休耕地1億ムーの有効活用で相当量の生産が見込めます。栄養的にも高血圧、高コレステロール、糖尿病向け食の改善につながるのですから、一石何鳥にもなるのです。
現在、中国のジャガイモ栽培は8000万ムー以上、世界の作付け面積の1/4を占めています。過去に発表された<全国食糧生産能力5000万トン新規向上プラン(2009-2020)>では軽視されていたジャガイモですが、これを2020年には、栽培面積1.5億ムー、年収穫量2億トン(5000万トンの穀物に相当)に拡大し、1ムー当たり1150kgの生産性(世界平均より20%低い)を2000kg以上にしようというのです。
ジャガイモの粉を中国人が好むマントウ、麺、ビーフンなどに混ぜ、主食として加工して副食品の立場から脱皮させるため、既にジャガイモの粉40%のマントウ、35%の麺などが中国農業科学院で開発されています。そのための品種改良も進んでおり、中国最大のジャガイモ生産企業希森三和社は18の優良品種を育成、加工用として優れた2品種をピックアップしています。2015年7月、北京市延慶県に国際馬鈴薯センターアジア太平洋センターが開設されました。中国で400年余り栽培されてきたジャガイモが今、脚光を浴びているわけですが、小麦粉1トン3000元に対し、ジャガイモの粉1万元という価格差を規模の拡大で是正し、毎年15%が貯蔵と輸送中に失われるという管理の質を向上させることも急務でしょう。  

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