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 第716回 東北経済の苦境−その2−

(2016年4月18日)

1年前(2015年2月)の<新常態下“新東北現象”調査>は、2014年の東北の凋落 に関して“断崖式下滑” という表現を紹介した後、この“新東北現象”に容赦ない分析を加えました。そこに列挙された具体的事例を見てみましょう。
大連の大船重工は2014年以降新規注文が一件だけ、吉林石化は大赤字で精製油は在庫の山、従業員2 4万人の竜煤グループは2014年50億元の赤字で地方政府が援助、大慶油田は2015年から年150万トン減産、その結果、黒竜江省は60億元の税収減。
もちろん、その一方で同調査は、産業分野別による深刻度の差異や同時点での就業・物価・収入の安定ぶり、消費の堅調ぶりなどを挙げてはいるものの、問題点の分析になると、矛盾の存在を率直に認め、加減乗除という側面から説明を加えています。その内容は、加法「経済を牽引する投資・消費・輸出のうち投資の貢献率が60%を超え、地方によっては不動産業による税収が4割を超えている」、減法「鉄鋼・セメント・造船などで本来淘汰・制限・転換すべき旧式生産設備が温存拡大され、省によってはセメントの過剰生産能力が40%に達している」、乗法「イノベーションで等比級数的成長が見込めるのに、従来型の単一産業、単一企業に依存した体質が改まらず、構造調整、モデルチェンジが遅れている」、除法「行革が遅れて政府による干渉・規制・監督が強く、市場化が遅れて企業経営環境が劣悪」というもので、東北経済の地盤沈下は表面的には外部の需要不足や投資による牽引力の弱さが原因に見えるが、実際は体制・システム上の矛盾が集中的に噴出したのだ、と結論づけています。
人工の外部流出と老齢化も指摘されています。東北三省からは概算で毎年180-200万人が流出しています。しかもその内訳には、季節労働者以外にも多くの青年壮年層、大学・高校・専門学校生や各業界の人材が含まれており、遼寧省の複数の大学では4割以上の学生が北京・上海・杭州などに流出していますが、それも一重に就職難・低収入が原因。工場の年収2万4000元が広州に行ったら30万元、これでは流出も当然で、イノベーション力も低下してしまいます。加えて、東北は一人っ子政策が厳格に行われていた影響もあり、出生率が全国平均の1.18と比べ、黒竜江省0.75、吉林省0.76、遼寧省0.74と極端に低く、これまた深刻な人口の高齢化を招来しています。

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