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 第726回 対外進出−その2−

(2016年7月4日)

中国企業の現地化に対する意識は徐々に変化し、現地従業員の雇用問題や、現地での原料調達・研究開発・市場開拓などを通じていかにして相手国に溶け込むかについて、意識的にも現実的にも改善の方向が見られるようになりました。今後は、相手国の経済や社会に対して企業としての社会的責任を如何に果たすかがチェックされると思われます。
一方で中国企業ならではの特殊な壁もあります。西側先進国では、中国企業の投資に期待する一方で、IT関係や兵器などに関する安全保障上の規制や、鉄鋼などで反ダンピングが取り沙汰されるなど、問題も少なくありません。ただ、一方で中国も国の安全保障を理由にフェイスブックやラインを排除したり、核心的技術の開示を求めたりしているわけで、こういった政治的な障害は依然として燻っています。
増加する海外投資ですが、その内容にも変化が見られ、既に2014年にEUに対する投資が前年比で2.7倍になるなど、先進国向け投資の増加が注目されました。従来は銅・鉄・石油など資源関係への投資が多かったのですが、経済成長の鈍化につれて資源が大量にだぶつく中、その勢いは減速し、その一方で、ヨーロッパの債務危機、それに伴う銀行の融資力の弱化、企業再編の活発化は中国企業に格好の市場を提供しました。投資項目別に見ると、先進国に対する投資は、金融業はもとよりインフラ投資も盛んになっています。2015年5月には国務院から<国際生産能力・装備製造協力推進に関する指導意見>が発表されましたが、既に世界80カ国以上と長期的な協力関係を締結している水力発電開発など従来型のインフラ投資に加え、最近、活発化しているアメリカをはじめとする先進国での鉄道や港湾の建設、先般のフランスと組んでのイギリス原発向け投資などは新しい動向として注目されます。
今後の主要ターゲットは、より高級な消費物資分野への参入。「安いものを大量に」から「中国ブランドの高品質消費物資の提供」へ舵を切ることは、“新常態”に突入している中国にとって、今後の出口戦略の主要アイテムでもあります。
先進国への投資は、相手国の法制度が比較的完備しており、M&Aをしたのちの対応も難度が低く、発展途上国に比べ、リスクが格段に低いことも大きな特徴ですが、一方で2015年に入り、一帯一路沿線諸国への投資が急増していることも見逃せません。

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