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 第771回 伝承

(2017年5月22日)

“工匠精神”(職人気質)の作興が叫ばれていることはすでに紹介しましたが、連動して伝統工芸振興への本格的な取り組みも始まっています。2015年末の18期5中全会では、第13次5カ年計画期の文化建設における重要な内容として伝統工芸の振興が盛り込まれました。これを受け文化部は直ちに伝統工芸振興計画の策定を始め、各地でも相次いで関連した動きが見られます。伝統工芸は基本的に手工業で、継承者が年々減る中、緊急保護や全体的保護が無く、まったく途絶えたり、一部が欠けてしまった例も珍しくありません。
2016.4.9付け人民日報に「最後の『堂倌』」という記事が掲載されました。『堂倌』とは旧時、四川省の料理屋で接客時や料理の注文時に節回しをつけて呼びあげるサービス係のことで、路明章さんは成都市の「鳴堂」最後の『堂倌』です。『堂倌』は歌い上げるだけでなく、メニューをすべて記憶し、会計も暗算でこなします。業界では当時「一に堂倌、二にかまど、三にまな板」と言われ、『堂倌』の地位は料理人より上だったとも。ただ、この芸も時代と共に後継者がいなくなり、映像での保存が必要になっています。
2016.4.3付け人民日報が紹介した山西省の稷山花鼓から発展した稷山高台花鼓は、漢族の民間舞踊が発展したもので、旧正月や各種縁日では必ずと言ってよいほど登場します。第一人者の蘇安福さんは2000年に高台花鼓の専門学校を設立して後継者を育成、北京オリンピックで一躍その名を知られました。しかし、全てが順風満帆とはいかず、累計800万元余りを投入した蘇さんでしたが、財力が底をつき、数年前に学校閉鎖に追い込まれ、この伝統芸能も継続に黄信号が点ってしまっています。
やはり保存や伝承は、民間任せ市場任せでは不十分です。例えば、青海省では、中国非物質文化遺産である唐卡(チベット仏教の装飾布絵巻)伝承者たちの育成手段として、国・青海省・青海大学が協力して同大学に育成クラスを開設しました。こういった行政による取り組みは学校教育への導入も後押ししています。江西省分宜県の小学校では腰鼓のサークルが活動、河北省隆化県の小学校では、同省の民間舞踊、“覇王鞭”が取り入れられています。各少数民族地区でも民族の伝統習俗の保存伝承が活発になってきているのは喜ばしい傾向ですが、一方で自立を見据えつつも商業化とどう折り合いをつけるかが課題になっています。>

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