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 第817回 中国キャッシュレス社会の衝撃

(2018年5月3日)

家や車を買うのに大金を持ち歩いたり、出稼ぎ労働者が稼いだ労賃を大事に背負って故郷を目指したのはつい最近の話。ここ15年ほどで中国人の支払い方法には現金から銀行カード、更にカードレスへ、今はスマホをかざしさえすれば支払いは完了、キャッシュレス社会への猛スピードの変貌ぶりは驚くばかりです。
ちょうど1年前の人民日報(2017.5.5)に杭州のキャッシュレス社会を紹介した記事が掲載されました。その冒頭では、店に現金を置かなくなったため、同市で発生した窃盗事件で犯人たちは4軒のコンビニに盗みに入ったものの、金庫はほぼ空っぽだったというエピソードが紹介されました。言い換えれば杭州では、コンビニもレストランもタクシーも、街の露店までも全てスマホに頼るキャッシュレス社会になっているのです。実際に記者がタクシーで現金を出したところ、釣り銭がなく、「アリペイかウイ—チャットにしてくれ」と頼まれたとも。アリペイの“城市服務”には公共交通支払い機能があり、QRコードを使って支払いができます。記事によると杭州では98%のタクシー、95%のスーパーとコンビニ、50%の飲食店が、更には、水道・電気・ガスや、病院、交通違反の罰金など50項目以上の公共支払いもアリペイを利用しています。トイレを借りるのも、街頭募金に応じるのもすべてスマホ。こうなると中国社会で生きていくにはスマホが必需品になります。
アリババの“支付宝”(アリペイ)と、テンセントの“微信支付”(ウイ—チャットペイメント)はまさにキャッシュレス社会の牽引車。勿論、杭州に限らず、急速に全土に広がっています。2017年6月、天津がアリペイ傘下の“螞蟻金服務”と、キャッシュレス都市建設を推進する協定に調印、市内にはキャッシュレスモデル市街地区が誕生し、天津財経大学など、全国初のキャッシュレスキャンパスも出現しました。同年7月時点では、キャッシュレス都市が杭州・武漢・福州・天津・貴陽等に拡大していました。
こういった現象に伴い、いま、中国社会では注目すべき大変化が起こっています。すなわち、社会の信用システム構築に劇的な効果をもたらしたことです。支払いを怠れば信用を失い、社会での全ての支払いが、すなわち社会生活そのものが不可能になりますし、多くの保証金も姿を消し、偽札さえも姿を消すことでしょう。そう、日本はとっくに置き去りです。

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