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第834回 労働環境改善への取り組み-その2-

(2018年8月30日)

政府のチェックも格段に厳しくなってきたわけですが、そこで問題になるのがチェックする側が袖の下を取ってチェックを形骸化しないか、という点。そこで政府は“双随機”制度を導入し、解決を図っています。つまり、捜査対象と捜査員を機械で自動的に選定するやり方で、意図的な操作を阻止しようというものです。
労働問題が発生する原因の一つに、産業の発展・変化によって生じる新しい労働環境や、ある時期特有の事情によって生じる問題に対して、法律が対応しきれていない、という点があります。現在の中国は、急速な経済成長とそれに伴う社会の変化、加えて新産業革命の進展により、これまでにない働き方が続々と出現し、様々な対応が後手後手に回っています。
例えば少年工の問題一つにしても、少年を虐待し搾取している、という批判には耳を傾けるべきですが、一方で、家計のために自ら希望している少年工も多く、これを奪えば、一家の貧困を更に悲惨なものにしてしまいます。これを無くすには社会保障・社会福祉の充実を図るしかなく、ただ取り締まるだけは行政の不作為と言われても仕方ありません。
行政側の問題といえば、現行の労働法や労働契約法には雇用側の罰金規則設定に対する規定が全くなく、雇用者側は恣意的に規則を作って罰金を徴収でき、不当な罰金にも被雇用者は泣き寝入りするしかありません。これは法の不備に他なりません。政府による労働者に対する法的支援については、弁護士による支援を推進するニュースが各地から散発的に伝わってきていますが、その一方で弁護士の活動を意図的に妨害する行為も頻発しており、この面での取り組みには一層の改善が望まれます。
新しい働き方の筆頭は、ネット関係(“網約工”)でしょう。明確な勤務時間の設定や数量を基準とした労働量の測定が難しい非従来型労働、様々な知能労働や創造的労働をどう把握し、規定するのか、これはなにも中国に限った問題ではなく、日本でも広がっている在宅労働の評価にも関わります。
それはさておき、他にも当面、論議になっているいくつかの問題があります。2年前の本コラム743、744号で取り上げた定年延長と有給休暇の問題はその後も続けて論議の的になっています。次回はその続きから。

次回は9月6日の更新予定 テーマは<労働環境改善への取り組み-その3->です。

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