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第879回 庶民生活の変遷-その2-

(2019年8月1日)

1年半ほど前、人民日報に湖北省咸寧市崇陽県銅鐘郷清水村の村民、沈懐徳さんの家計簿に関する記事が掲載されました。沈さんはなんと36年間欠かさず、克明に家計簿をつけていました。その29冊の現金出納帳に記載されている数字の一つ一つが時代の変遷を記録しているわけで、偶然それを目にした銅鐘郷幹部の陳振清さんがその価値に気づき、沈さんの出納帳は湖北省資料館に収蔵されることになりました。       
帳簿は沈さんが所帯を持った1981年旧暦7月18日から始まっています。当時、手元の現金は10・6元。中秋節が近づき、餅と醤油を1・45元で買いました。1981年と言えば、鄧小平による改革開放が始まった1978年から数えて3年目。まさに春風が吹き始めたころで、沈さんも生産責任制の実施で田畑を分配され、6ムー(0・4ヘクタール)を請け負いました。それから数年、暮らしも日一日と向上し、1982年には家計も黒字になり、1983年に28元で人生初の腕時計を買いましたが、半年で壊れてしまい、修理に4元かかったとも。       
沈さんの収入が1万元を超えたのは、1992年の鄧小平による南巡講話で中国の改革開放政策が新たな積極的展開を迎え、高度経済成長期へと入っていった1994年のこと。沈さんが住む湖北省は、1992年の党大会で提唱された“三沿開放”の一つ、“沿江”(長江沿い)の発展に含み込まれていたのです。その後、沈さんの収入は増加し続け、2014年からは毎年、3・5万元、5・2万元、5・7万元、6・4万元と以前にもまして急速に増えています。       
37年間の帳簿を見ると、交際費以外で最大の支出は学費。沈さん夫婦には7人の子どもがいたため、全員学校に通っていた1997年には総額5553・25元と、当時の総収入の3分の1を超えました。帳簿は農業税の廃止も記録しています。1981年の6元に始まり、2000年には2037元まで上がりましたが、2006年に廃止され、歴史的なニュースになりました。       
子どもが多く、出稼ぎに行けなかった沈さんは1995年に牛を売り、村で初めての耕運機を購入し、他人の耕作を手伝う事から事業を拡大、その後、畜産業で成功しました。今ではハトの売上だけでも1万元を超え、副業収入は年間5万元近くになったということです。
      
長江中流域は今、政府の“長江経済ベルト”発展政策の中核として注目を浴びており、その成果が今後、沈さんの家計簿にどう反映されるのか、興味が尽きません。

次回は8月8日の更新予定 テーマは<庶民生活の変遷-その3->です。

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