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第886回 最近のエネルギー問題「天然ガス」 ―その1―

(2019年9月19日)

2018年冬、中国では天然ガス不足が大問題になり、同年2月5日付人民日報はこの問題を大きく取り上げました。それによると、中国石油天然ガス社の統計で、不足量は48億㎥と従来の数倍にもなり、液化天然ガスの価格はトン当たり1.2万元にも達しました。その直接の原因は消費量の急増で、国家発展改革委員会のデータによれば、2017年は前年比17%(330億㎥)増と、その前5年間の平均増加量の2倍以上に達したとのことです。       
ではなぜそんなに急増したのでしょうか。同記事によれば、主要原因は“煤改气”。近年、PM2.5などの大気汚染が深刻な中国では汚染対策が待ったなしで、2017年が国の<大気汚染防治行動計画>の目標となる年に位置付けられたため、各地で積極的に“煤改气”(石炭から天然ガスへの転換)が進められました。河北省だけで260万戸が暖房を天然ガスに切り替え、20億㎥余りの需要増につながりました。このような急増に供給が全く追い付かなかったのが原因ですが、そこには、省レベルの指導者たちが政府の呼びかけに応じて短期間に成果を上げ、自己の評価を高めようというゴマすりにも似た無計画な業績第一主義が存することは否めません。例えば山東省では、従来の計画を50万戸も超過した転換を進めたため、大規模な天然ガス不足を招来したのです。同記事では更に、工業用燃料や発電に使われる天然ガスの消費量の急激な上昇も一因に挙げています。       
とは言え、上述の環境汚染問題解決のためにもよりクリーンなエネルギーへの転換は世界的な趨勢です。天然ガスが主要エネルギーに占める割合は、欧米の31-33%、アフリカの26%、アジア太平洋地区全体の12.7%に対し中国では2017年時点で7%に過ぎず、現在進行中の第13次5カ年計画完成時の2020年でも10%に到達するのがやっとです。その点から考えれば、一部の暴走はなんとか制御しても、長期的には石炭への依存度を下げるため、相当分の天然ガスの供給増を図る必要があり、国内の新規開発はもとより、国外からの輸入など、あらゆる方策を総動員する必要があります。現在、中国の天然ガス輸入ルートは、西北方面では中央アジアからA、B、C三本が開通、現在4本目を建設中で、東北方面ではロシアからのパイプラインを建設中、西南方面ではミャンマーからのパイプラインがすでに稼働し、更に海運を通してのLNG受け入れ能力が年間6695万トンとなっています。

次回は9月26日の更新予定 テーマは<最近のエネルギー問題「天然ガス」 ―その2―>です。

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