企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

第888回 日本企業に対するM&Aの回顧と展望

(2019年10月3日)

中国企業による海外企業のM&Aは、リーマンショックの傷も癒え2015年頃から一挙に拍車がかかり、同年第一四半期には中国化工集団がイタリアの大手タイヤ企業ピレリを、錦江国際集団がフランスのホテル大手ルーブル・グループを、復星国際がフランスのクラブメッド(地中海クラブ)を買収するなど、2007年以来の活況を呈しました。       
こうした動きの新しい特徴は、過去の数量的拡大を目的とした動きから、ブランドや技術を求めるようになったことで、2016年2月18日の人民日報は第23面全面を使い、「中国企業はグローバルナバリューチェーンの上流へ向かって進軍」という見出しをつけました。       
こうした動きは対日本企業にも反映されています。2004年、工作機械メーカー池貝が上海電気集団に、2010年に金型の萩原がBYDに買収され、相前後してゴルフクラブの名門、本間ゴルフも買収され、更にラオックスが蘇寧電器に、三洋電機はテレビ事業部門が2015年の中国国内での事業権譲渡を経て、2018年に長虹グループに吸収されました。2015年、東芝のテレビ事業や照明事業が中国企業に、東大発ベンチャー、ポップインが百度に、2016年には鴻海集団がシャープを、美的集団が東芝ライフスタイルを、2018年には海信集団が東芝の映像事業を買収しました。また、2012年にソニー・東芝・日立製作所のディスプレー事業を統合したジャパンディスプレイも経営不振が続き、中国資本の参入が取沙汰されています。       
こうしたM&Aには短期に巨額の投資が必要となり、資金の流れに対する当局のチェックも厳しくなっています。復星国際の郭広昌会長失踪事件は記憶に新しいと思います。       
大企業以外でも、個別の分野で優れた技術を持っている多くの中小企業が中国企業に買収されています。後継者不足、大企業のコスト削減などで苦境に立たされている企業が少なくなく、こういった企業を救済しつつ技術を吸収しようという動きが活発になっています。        
M&Aに関するノウハウが乏しかった当初、中国企業の外国企業買収は多くが失敗してしました。90年代に買収された赤井電機や山水電気はすでにその名が消え、パイオニアは香港ファンドに完全子会社化され、ハイアールで「アクア」ブランドを展開する三洋電機、山東如意科技集団に頼ったレナウンも成果はいま一つ。一方で、日本企業に対するガバナンスをよく理解した美的集団の東芝白物家電事業の買収などは成功例と言えましょう。

次回は10月10日の更新予定 テーマは<ネットモラルとネット犯罪の取り締まり>です。

バックナンバー一覧はこちら

三瀦先生のコラム