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第889回 ネットの取り締まり―その1―

(2019年10月10日)

      
「ネット読書、三つの内憂」、「APP、三つの落とし穴」、「モバイルネット、三つの足枷」といったタイトルが次々と人民日報の紙面に登場したのは、第19回共産党大会が開催された2017年前半。この年、政府はネットの取り締まりを強力に推進しました。ただ、それは決して突然降って湧いたのではなく、前年の2016年に基本方針が明確に提示され、関連法整備を進めたことを踏まえて、いよいよ具体的な取り組みに突入したことを示しているのです。       
2016年3月、中国初の全国的な民間団体として、国内の主要ネット企業などを網羅した中国サイバー空間安全協会が成立、同時に、中央ネット安全&情報化指導小組の承認を経て、中央ネット情報弁公室・教育部・工業&情報化部・公安部・国家新聞出版広電総局・共青団6部門が共同で<国家ネット安全宣伝ウイークキャンペーンプランに関する通知>を出し、毎年9月の第三週を宣伝ウイークとすることを決めました。       
こうした動きが先ぶれとなって、いよいよ同年4月19日、習近平による長文の<ネットの安全と情報化工作座談会における講話>が発表され、人民日報(4.26)にその全文が掲載されました。まさに号砲一発です。7月には<国家情報化発展戦略綱要>が、12月には<国家サイバー空間安全戦略>が打ち出される一方、法律的な裏付けとして、11月には<ネット安全法>が全人代常務委員会で可決(2017.6.1施行)され、併せて、修訂版<無線電信管理条例>が国務院及び中央軍事委員会から公布(2016.12.1施行)されました。       
翌2017年はまさにこれらを具現化するスタートの年として位置づけられており、それはまた、同年秋の党大会で習近平政権が2期目に入るのに合わせ、その権力基盤を強固にし、権力体制を確立する一環としても重要な意味を持っていました。       
ネットの取り締まりには2つの顔があります。一つは純然たる一般犯罪の取り締まりで、例えば7大電信詐欺(1.金融財テク詐欺、2.身分詐称、 3. 違法業務セールス詐欺、4. 偽物販売、5. インチキ褒賞詐欺、6.優待チャージ詐欺、7.偽薬販売)などはその代表的な例でしょう。2016年から強力な取り締まりの方針が打ち出されたのには、前年の2015年の被害額が200億元に上ったことも関係しているでしょう。ただ、もう一つの顔として、ネットの取り締まりによる政治的な言論弾圧の側面も指摘されました。2017年以降の動きは次回に。

次回は10月17日の更新予定 テーマは<ネットの取り締まり―その2―>です。

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