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第898回 外資政策新たな動き

(2019年12月12日)

中国では今年になって外資政策の見直しについて新たな動きが相次ぎました。3月には全人代で<外商投資法>(6章42条)が採択され、対外開放の更なる推進と投資権益の保護を目的に、外国企業の投資の許認可・促進・保護・管理等に関する統一的規定を整備し、新しい法律制度の基本的な枠組みを構築することが謳われました。       
今回注目されるのはその後の対応のスピードです。中国では重要な法律は、まず親法律を整備し、その後に実施細則を定め、職掌する官庁の決定、裁判所の関連裁定の根拠の確立などを図るのが通例で、その間、それぞれに、草案に対するパブリックコメントの実施、試行から施行へ至るプロセスなどが加わり、一定の期間が必要になります。しかし、今回は11月には<外商投資法実施条例>の草案が公開され、ほぼ同時に国務院から20か条の関連政策が打ち出されました。こうした背景には、近年の外資の中国進出の鈍化に対する危機感があります。すでに4年前の2015年5月11日、人民日報が<外资跑了吗>「外資は逃げ出したのか」という特集記事を掲載したのはその傍証の一つと言えましょう。       
如何にして外資の参入条件を緩和するか、という考えも同年の<外商投資産業指導目録>にはや反映されています。勿論、単に外資の導入を増やせばいいというものではなく、その投資対象をよりハイエンドな部分に移行させることも重要で、新素材産業、新エネルギー自動車、半導体、Eコマース、クラウド、IoTといった分野への誘導も意図されています。       
2017年1月、国務院は<対外開放を拡大し、外資を積極的に利用する若干の措置に関する通知>を出し、①外資の参入制限をさらに減らす ②財税支持政策を定める ③国家レベル開発区の総合的投資環境を整備する ④人材の出入国の利便性を高める ⑤ビジネス環境を向上させる、という方針を打ち出し、12の領域で外資に対する開放を一層進めると同時に、当時、政府がしきりに標榜していた、2025年に中国を世界の製造強国にするという<中国製造2025>にも、差別なく外資企業を組み入れる、と言明しました。こういった一連の動きが今年の措置へとつながっているのです。2018年の主要対中投資国の各伸び率は、シンガポール8.1%、日本13.6%、イギリス150.1%、アメリカ7.7%、そして一帯一路諸国からは13.2%増でしたが、千変万化の国際関係の中で、今後これがどう変化するのかが注目されます。

次回は12月19日の更新予定 テーマは<中国映画界最近の話題>です。

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