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第901回 “扫黑除恶”の展開-その1-

(2020年1月9日)

“打老虎,捉狐狸,拍苍蝇”(トラを叩き、キツネを捕まえ、ハエを叩く)は習近平政権の反腐敗キャンペーンのスローガンで、トラが大物権力者を、キツネが汚職による海外逃亡者を、ハエが下っ端役人の比喩である事はよく知られています。       
2012年に習近平が総書記となって登場して以来、特にトラやキツネを対象とした摘発が精力的に進められました。2016年2月3日の人民日報には、2012~15年の4年間における主な取り組み30項目が説明を添えて大々的に掲載されました。       
こうした取り組みが進められる中、2017年頃から、いわゆる“黒社会”(裏社会)をターゲットにした取り組みが徐々に本格化しました。これは、一方で習近平が2021年を目標に取り組んでいる貧困撲滅運動の重点が農村の振興であり、それを妨げているのが農村に根を張っている暴力的やくざ組織及びそれと癒着した地元官僚の存在であることと密接にかかわっています。旧社会で土豪劣紳と称された地方の有力者は多かれ少なかれこの部類であり、中国社会に巣くう獅子身中の虫でもあるわけです。       
こういった背景を踏まえて、最近人民日報のみならず、街のあちこちで頻繁に目をするのが“扫黑除恶”(“黒悪”を除く)、すなわち上述のような暴力団絡みの連中を排除しよう、というスローガンです。2017年の19全大会終了後、党中央と国務院は全国的に“扫黑除恶”特別闘争を展開する決定を下し、その基本コンセプトとして「三つの結合」「五つの堅持」を通達しました。その「三つの結合」の第2項には、「闇勢力の犯罪撲滅を反腐敗や末端のハエ叩きと結びつける」と明記されています。       
吉林省における闇勢力絡みの事件に対する再審を紹介した記事(2017年1月24日付人民日報)のタイトル“我们不再是黑社会了”(私たちはもう闇社会ではない)は、その意味でまさに象徴的な言葉と言えましょう。こういった動きを踏まえ、同年2月、最高人民検察院は<検察の職能を十分に発揮して法に則り“村霸”(村のボス)及び宗族無法勢力の犯罪を取り締まり、農村の平和と安定を擁護することに関する意見>を出し、各ランクの検察機関にこれらの勢力及びその威を借りた役人の職務犯罪に断固とした打撃を加えるよう求めました。また、人民法院もこれと同調して積極的な取り組みを全国に通達しました。続きは次回に。

次回は1月16日の更新予定 テーマは<“扫黑除恶”の展開-その2->です。

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