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第912回 新型コロナウイルスと人民日報の報道-その1-

(2020年3月26日)

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっていますが、この辺で、発生当初から1月末までの初期の中国政府の動きと取り組み姿勢の変化を、人民日報の報道の仕方をチェックしつつ分析しておきましょう。       
3月13日、香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は、入手した未公開記録から、最初の患者は2019年11月17日に湖北省武漢市で確認されていた、と報じました。それまでは地元当局の発表として12月12日に最初に患者が見つかった、とされていましたから、事実なら、その1カ月近く前に遡ることになります。11月8日に筆者が武漢から帰国して僅か10日ほど後ですから、まさにタッチの差でした。中国当局が武漢市で原因不明の肺炎患者が44名発生している、と発表したのは年を越した1月3日ですから、随分間が空いているものです。約一週間後の1月9日、当局は、患者から新型コロナウイルスが発見された、と発表、同日、WHOもその可能性を認めました。1月7日には香港政府が武漢を訪れた30人ほどに発熱・肺炎の症状が発生していることを発表、台湾の総統選挙に関心が集中していた日本の新聞もこのころから次々と報道を始めました。この時点では、日本での感染者の存在はまだ確認されていませんでした。   
1月9日、CCTVが、政府調査団によって同ウイルスが発見されたこと、ワクチンなどの開発に相当に時間がかかることが報じるに及び、翌、10日頃から日本の新聞報道も重大ニュースとして取り上げ始めました。ただ、この時点では人から人への感染は確認されていない、という地元当局の情報もあり、楽観視する向きもありました。「SARSでは?」との書き込みをした8人が武漢の公安から処罰されたことは、当時の政府の考え方の一端を示していると言えましょう。その一方で香港政府の対応は素早く、感染症の警戒を「厳重」レベルに引き上げ、高速鉄道の乗客に体温検査を実施、台湾政府は「注意」レベルとして、動物などへの接触を避けるよう注意を促しました。   
1月10日頃から日本の新聞にも本格的な報道が出始め、16日には日本国内初の感染者が神奈川県で発見されました。しかし、中国共産党の機関紙である人民日報にはこの期に及んでも、新型コロナウイルスに関する記事は全く掲載されていなかったのです。

次回は4月2日の更新予定 テーマは<新型コロナウイルスと人民日報の報道-その2->です。

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