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第916回 貧困撲滅は間に合うか―その1―

(2020年4月23日)

習近平政権登場後、貧困撲滅は政権の大きなテーマになりました。「2012年の中国共産党成立百周年には貧困を撲滅し、小康社会を実現する」という政策目標を高く掲げたからです。その後、今日に到るまで、あらゆる政策を総動員して貧困撲滅に取り組んできましたが、降って湧いた新型コロナの猖獗は、その実現に黄信号どころか赤信号を灯しかねない状況になっています。その結果によってはこれまでの営々とした努力が一挙に崩壊し、その一定の成果が矮小化されることも考えられます。そこで今のうちにこれまでの取り組みを客観的に整理しておこうと思います。とはいえ、膨大な資料がある一方、それほど紙数を費やすることもできないので、習近平政権第二期が始まった2017年以降を主たる対象として分析を進めます。まず、その前年(2016年)までの成果を簡単にトレースしてみましょう。       
2017年3月の人民日報に「2016年貧困扶助成績表」が掲載されました。それによると、農村の貧困人口(年収2300元以下)は4335万人(2015年比1240万人減少)、貧困地区住民一人当たり平均可処分所得は8452元(8.4%増)、中央・地方政府の貧困対策財政支出は1000億元以上(中央から667億元、前年比43.4%増)、各種金融機関の貧困扶助小口融資額は2833億元、対貧困村派遣駐在幹部は12.8万か所の計54万人以上、貧困村第一書記への全国選抜優秀幹部の派遣は8.8万人とあります。これらの項目と前後の人民日報の報道を重ね合わせると、貧困扶助の重点が優秀な指導者の派遣による村おこしとそれを支える金融支援にあることがわかります。   
一方、2017年春の全国各地からの報告によると、2016年地方別貧困脱却数ランキング上位5地区は、①山東省151万人②湖北省147万人③陝西省130万人④湖南省125万人⑤貴州省120.8万人となっています。同表には22の一級行政区が含まれていますが、北京市・上海市・天津市や江蘇省・浙江省・福建省・広東省などは含まれず、チベット自治区・黒竜江省も含まれていません。これらから言えることは、すでに貧困者が限られている先進的な地域と、貧困撲滅が進んでいない地域が表になく、上位にランクされているのは、近年、経済発展が目覚ましい地域であることです。こうした成果を踏まえ、政府は「2017年も1000万人の貧困脱却を図る」という目標を掲げました。その後の動きはまた次回に。   

次回は4月30日の更新予定 テーマは<貧困撲滅は間に合うか―その2―>です。

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