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第919回 貧困撲滅は間に合うか―その4―

(2020年5月14日)

2019年1月、国務院は<消費による貧困扶助推進と貧困脱出戦攻略に関する指導意見>を発しました。その中には、貧困地区の農産物流通・販売ルートを整備し、供給チェーンを形成し、流通サービスネットワークの拠点づくりを進めるとともに、農産物の供給レベルを高め、基準を設定して品質の向上を図ることや、レジャー農業や農村観光を推進するためのインフラ整備・計画立案・宣伝強化などが盛り込まれました。この事は、貧困扶助が、社会保障的サポートをする段階から、起業し、産業を振興し、自ら発展する力を育成する段階へとステップアップしつつあることを示しています。したがって、そのためのインフラ整備が必要不可欠な重要アイテムになることは論を俟たず、例えば、全国各地で進められている農村に通じる自動車道路の整備は、1990年代の“村々通”がバージョンアップしたもので、“四好”(“建好、管好、护好、运营好”「しっかり建設し、管理し、補修し、活用する」)を維持して、公共バスの運行や物流を保証することがその主たる目的になっています。       
こういった消費による貧困扶助を進める中でクローズアップされているのが、農産物のブランドによって付加価値を加えることがいかに収入の増加に必要か、ということです。2019.1.21付人民日報の記事<消費による貧困扶助、国の貧困脱出攻略政策に組み入れ>によると、例えば、吉林省延辺朝鮮族自治州汪精県のキクラゲは品質が良いにもかかわらず、原価1斤(500グラム)20元余りに対し30元にもならない価格で買いたたかれていましたが、ECによってその品質の良さが知られ、80~90元で買われるようになった、ということです。逆を言えば、閉鎖された地域で、品質が劣悪でも独占的立場を利用して高く売ろうとしても、ECなら、容易に広範な地域の同種の商品と比較され、淘汰されますから、必然的に品質の向上を図らざるを得ません。   
2019年初頭から、人民日報は一面トップで各地の貧困村の貧困脱出具体例を連載し始めました。貧困脱出攻略三年行動計画の二年目を迎え、2019年の一号文献として掲げられた貧困脱出攻略戦はいよいよラストスパートに入り、同年9月9日の人民日報は4面ぶち抜きの大特集を組んでその成果を誇示しましたが、降って湧いたコロナ禍がその前途に立ちはだかりました。この苦境を首尾よく切り抜けるか、は今後の中国の行方を大きく左右するでしょう。   

次回は5月21日の更新予定 テーマは<中露関係再起動>です。

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