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第925回 2020年春の全人代-その2-

(2020年6月25日)

③の米中関係については、政治報告と記者会見の中で、「米中の第一段階の貿易合意を共同して徹底させる」として問題の軟着陸への姿勢を示し、香港問題について、名指しを避けつつも「外部からの干渉には断固として反対する」との姿勢を示すにとどまりました。政治報告はそのほとんどが新型コロナ対策を含めた内政に費やされています。       
李克強首相は、まず直面する主要な困難として、世界的には、新型コロナによる経済の衰退、産業チェーンの寸断、貿易・投資の縮小、主要商品市場の動揺を、国内的には、消費・投資・輸出の下降、雇用の悪化、企業特に中小零細企業の経営難、金融リスクの増大、地方財政収支問題を指摘しました。その上で、総合的に従来の目標を見直し、雇用と民生を優先する姿勢を示し、都市部新規就業者900万人以上、都市調査失業率6%、登記失業率5.5%、国民消費価格上昇率3.5%という目標を掲げました。その上で、今年は現在の予測困難な状況から経済成長率の数値目標を設定しないとし、そのことが“六穏”(雇用・金融・貿易・外資・投資・マインドの安定-2018年7月31日中央政治局会議)方針に沿った今年の“六保”(就職・民生・市場主体・食糧・エネルギー保障・産業サプライ両チェーン確保)にプラスである、との見解を示しました。   
そのための方策の一つが積極的財政政策です。財政赤字率は3.6%以上に設定、赤字規模を昨年より1兆元上積みすると同時に、1兆元の新型コロナ対策特別国債を起債し、そのすべてを地方行政の下支えに回すとしました。次が経済の下支えと雇用の確保から重視される中小零細企業に対する支援です。増値税や企業年金保険費など様々な税金・保険料の減免拡大や所得税の1年延納可能措置も盛り込まれ、資金繰りを支えるため、各銀行に対し、継続融資も含めた融資条件の大幅な緩和を求め、企業の債券融資拡大も奨励しました。   
国有企業改革にも「国有企業改革三年行動」という新方針が示されました。従来から推進されていた混合所有制改革の徹底です。就任以来、国有企業改革を唱えつつも様々な抵抗に直面していた李克強首相にとっては、この度の困難は市場化への改革を進める好機とも言えます。民営企業を悩ましてきた混合所有制における不当な差別を除去し、一方でPPPを積極的に推進すれば、民営企業の眼前にこれまでにない地平線が開けてきます。   

次回は6月25日の更新予定 テーマは<2020年春の全人代-その3->です。

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