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第945回 思い切った土地改革―その1―

(2020年11月19日)

現在進められている画期的な中国の農村土地改革が始まったのは2014年のこと。同年暮れの中央農村工作会議に先駆け、政府は<農村土地経営権の秩序正しい移動をリードし、農業の適度な大規模経営を発展させることに関する意見>を公表しました。そこで打ち出された “三権分置”は中国の土地制度改革においてまさに画期的かつ重大な制度改革であると言えましょう。その内容を端的に示した32文字とは以下の通り。       
三权分置,确权登记,有序流转,适度规模,家庭基础,农民自愿,农地农用,鼓励种粮”       
この“三権分置”とは、農村の土地の集団所有制という従来の公有制度は維持しつつ、土地の所有権・請負権・経営権を分離しようというもので、それまでの所有権・請負権という“二権分置”の壁を打ち破るものです。近年、都市化が進むにつれ、農民が都市へ大量に流入し、請負権は持っていても、それを活用しない農民がますます増加してきました。そこで、請負権を請負権と経営権に分割することで、農民が、請負権を維持しつつ経営権を他人或いは一定の組織に委ねてその恩恵にあずかり、生活を安定させ、自由に職業選択する余地を広げられるようにしたのです。勿論、こういった大改革後も、必要な耕地の確保は譲れない大前提であるので、農家単位での農業経営が中国にとって最も基本的なスタイルであることに変わりはなく、土地経営権は、主として優れた経営技術をもつ大規模営農家や農民合作社への移転が望まれます。しかし、その一方で、土地が有効活用されることは、第二次、第三次産業が発展する大きな下支えにもなります。そこで政府はほぼ同時期に“农村三块地改革”と言われる<農村の土地収用、集団所有制建設用地の市場参入、宅地制度改革の試みに関する意見>を出し、これは2020年現在も精力的に推進されています。但し、こういった様々な改革に、土地の登記がきちんと行われていること、即ち“确权登记”が欠かせないことは言うまでもありません。   
農地の大規模集約化が進められた背景には、小規模零細農家による非効率もその根底にあります。2014年時点で、中国の農家一戸当たりの平均農地は.5ヘクタールと、EUの40分の一、アメリカの400分の一しかなく、食糧の安全保障を担いつつ、海外の主要農産物輸出国と競うには、その基盤があまりに脆弱だったのです。   

次回は11月26日の更新予定 テーマは<思い切った土地改革―その2―>です。

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