企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

第953回 半導体を巡って-その3-

(2021年1月21日)

[四]しのぎを削る技術革新       
半導体の2大分野と言えば、データの記憶を担うメモリーと演算処理を担うシステムLSI。メモリー分野ではサムスン電子がいち早く3D技術を実用化し、先端を走っています。サムスンは2021年1月に、半導体部門の設備投資に2021年3兆3千億円規模を投資する計画を示しました。大容量データを処理するのに必要な先端DRAMはサムスンの独壇場で、中国のVOX(ビボ、オッポ、シャオミ)への供給路確保のための先手にも。ライバルの韓国SKハイニックスが2020年10月にインテルのメモリー事業を買収、長期データ保存NAND型フラッシュメモリーでキオクシアを抜きましたが、最近、TSMCがグーグルと提携し、2022年にも次世代技術3次元パッケージング(3D封止)製品の量産を開始すると表明、いよいよシステムLSIの分野でも3D技術の実用化が始まりました。ムーアの法則からすれば、微細化が限界に近付き、立体化への転換がさらに本格化すると言えましょう。       
こうした中、中国が力を入れているのがEDA(半導体の「論理設計」や「回路設計」などの工程で使うソフト」で、これまでは世界シェアの9割を占める米企業(シノプシス、ケイデンス、デザイン・システムズ、メンター・グラフィクスの3社)に頼っていたのが、トランプの制裁で自力開発を決心し、政府による資金援助と、市場を餌にして得たシノプシスなどの人材・技術面での協力で、次々とEDA開発企業が設立されています。
2020年8月の国務院「新時期のIC産業・ソフトウエア産業の質の高い発展に関する若干の政策」は8方面の政策(財税、投融資、研究開発、輸出入、人材、知財権、市場への応用、国際協力)を示し、①中国国内に設立された関連企業は所有制の別に関わらず、規定に従い関連政策を享受。②ICの生産製造について、28ナノ以下の生産を奨励、経営期間が15年以上のこの種の生産企業やプロジェクトには、最初の10年間、企業所得税を免除する、などの措置を明らかにしました。   
供給網の保護や技術投資で中国との競争に打ち勝つ、としながらも、懲罰的手法による米国企業への副作用を懸念するバイデン政権の今後の対応が、国際的な半導体供給システムにどんな変化を生むのか、しばし、注目すべきでしょう。   

次回は1月28日の更新予定 テーマは<第14次5か年計画>です。

バックナンバー一覧はこちら

三瀦先生のコラム