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第965回 老人とIT化

(2021年4月15日)

中国が今、ネット社会に置いてきぼりになった高齢者の問題に真っ向から取り組んでいる。ここ数カ月、人民日報は、その内容を報じた記事が目白押しだ。職業柄扱い慣れている人や、周囲に教えてくれる人がいる場合は良い。老人だけの世帯、とりわけ過疎が進む農村ともなれば、埒外に放り出される老人も少なくない。       
 数年前から、ネットでは、鉄道の切符が買えないとか、高齢者の様々な不便が既に紹介されていたが、コロナ対策が厳しくなって、「健康」コードがないと通行できない、となると切羽詰まる。命にかかわる問題だ。そこで、スマホを使えない老人には、紙ベースの身分証明書や通行証明書で代替可能にしよう、という動きが起こった。老人の「デジタルギャップ」を埋める努力と言える。       
 中国では2019年末に60歳以上の老人が2.54億と人口の18.1%に達した。習近平が2021年に全面的な「小康社会」の実現を目指すならば、これらの人を無視するわけにはいかない。“老有所养、老有所依、老有所乐、老有所安”が必要になる。2020年6月のデータでは、中国のネットユーザー9.4億人のうち、60歳以上の老人はわずか10.3%にすぎない。2020年、国務院は<老齢者のスマート技術利用難を適切に解決することに関する実施プラン>を打ち出し、日常生活において、従来からのサービスを維持しつつ、よりシンプルなスマートサービスも提供するよう要求した。これに対し、上海市は同年9月、上海自動車と提携して、“申程出行”というサービスを始めた。利用者はネット上のボタン一つを押しさえすればその場所に車が駆け付け、タクシー乗り場でそこにあるボタンを押しさえすれば車がやってくる。
 コロナによって老齢者のネット必要度は急上昇している。アリババが発表した<老齢者デジタル生活報告>によれば、2020年第3四半期の老齢者タオパオ使用度の増加率は、前年同期比で国民全体の増加率を29.7ポイントも超えたという。であればなお、そのニーズに適切に応えることが要求される。そこで今、南京市では特別キャンペーン、海南省では<敬老月キャンペーン>など各地で、老齢者向けのスマホ講習会が実施されている。地域コミュニティの「社区」でも各“網格員”(区画員)が地域の碁盤の目を担当して老齢者のスマホ対策に取り組む姿が見られる、という。       

次回は4月22日の更新予定 テーマは<本格化する技術革新への取り組み>です。

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