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第967回 技術革新への取り組み-その2-

(2021年4月29日)

 2019年は中華人民共和国建国70周年に当たる。この年、人民日報には、習近平政権誕生以来、更に2018-19年にかけての様々な科学技術分野における中国の成果を誇示する記事が矢継ぎ早に掲載された。1月1日の「新年の挨拶における中国の“力度”」と題する記事では、習近平の年頭の辞に登場した、北斗測位衛星システム、月探査衛星嫦娥四号、宇宙ステーション天宮二号、C919大型旅客機、洋山第四期自動化埠頭、南水北調、宇宙望遠鏡中国天眼、二隻目の空母、全国的な河長制実施、国産大型水陸両用機、一帯一路、港珠澳大橋などが写真付きで紹介された。この他にも、様々な記事で、スパコン天河三号、海洋探査船科学号の西太平洋探査、「地殻1号」深部大陸科学掘削ドリルコア技術・応用、原子スケールによる材料の軌道と回転磁気能率の測定、万有引力定数Gの正確な測定など枚挙にいとまがない。       
 こういった中でも注目すべきは、クローン猿の誕生や遺伝子組み換え作物の開発、炎症性免疫反応の新型分子と細胞メカニズム、ターゲット腫瘍のミクロ環境の抗腫瘍療法といった、生物学的な研究とその応用だろう。中国は、20世紀後半以降が情報技術とIT化の時代だったのに続き、21世紀中葉は第六次科学技術革命としての新生物革命、更にはそれに続く新物理学革命の時代になるという世界的認識を踏まえ、2021年をその出発点と考え、既に90年代末期から対応策を練り始めていた。生命科学をベースに、情報科学技術やナノ技術を駆使して人々の「心のニーズ」をも解決しようとする技術革命は、中国科学院の何伝啓氏によれば、「『生態模倣』・『創生』・『再生』という三つの『生』を包含する『再生革命』」であり、それには更に様々な範疇が包含されるが、その応用範囲は無限と言ってよいほど広く、中国がその研究開発に官民挙げて全力を挙げていることを忘れてはならない。       
 2020年の統計では、第13次5カ年計画期間中に中国の基礎研究費はほぼ倍増(2兆2100億元)した。技術市場の成約高も倍増、ハイテク企業は2.5倍に(22万5000社)、AI関係企業も4000社を超えた。この間、政府(軍)、高等教育機関、企業の連携が急速に整備されたことは周知のとおりである。2019年12月4日、中国科学技術大学の研究チームは、76個の光子を用いた量子コンピュータのプロトタイプ「九章」の作成に成功したと発表した。2019年9月に発売されたグーグルのコンピュータ「Sycamore」より100億倍速い。       

次回は5月6日の更新予定 テーマは<米中関係を巡る人民日報直近の報道>です。

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