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第969回 米中関係を巡る人民日報直近の報道-その2-

(2021年5月13日)

 3月11日に全人代が閉幕すると、互いに自己の立場を強くアピールする位取りの時期に入った。アメリカ側は、3月12日に「クアッド(Quad)」(日米豪印4か国安保協力体)首脳会議を開催し、3月16日には日米「2+2」(日米安全保障協議委員会)を開いて、3月18日-19日の米中外交首脳会談に臨んだ。これに対し、人民日報は3月19日に崔天凱駐米中国大使の発言(3月17日)を紹介、中国は核心的利益を断固譲らない、とし、「アメリカの同盟関係構築は、夜道を歩くのに大声で歌って自分を鼓舞するようなもので何の役にも立たない」と揶揄した。この米中外交首脳会談では双方が冒頭に異例の長さで応酬したことが大きく報じられ、日本でもその点だけがクローズアップされたが、3月21日に外交部スポークスマンは、「米中外交首脳会談はタイムリーで有意義だった」、「双方はいくつかの具体的な問題(気候変動・ワクチン・国際問題)において協調することで共通認識を得た」と肯定的評価のみを伝え、同日、人民日報も三面の3分の2を使い、米中外交首脳会談に関する記事を掲載したが、公式報道部分の記事では「双方は『率直に、踏み込んで、長時間、建設的に話し合い、その結果は有益で、相互理解を深めた』」として中国側がいかに建設的に真摯に各問題に取りくんでいるかを詳細に紹介、アメリカについては、「アメリカは台湾問題について一つの中国を堅持する、と再確認した」と一行触れただけだった。その一方で、専門家の論評という形で、「中国は自己の立場をはっきり述べ、冒頭のアメリカの傲慢を打ち砕いた」、「アメリカの価値が国際的価値ではなくアメリカの意見が国際世論ではなく、アメリカなど少数の国が作ったゲーム規則が国際規則ではない」、「アメリカの主張する人権や自由は中国に対する内政干渉」と主張しつつ、「中米関係はゼロサムゲームではなくウィンウィンの関係だ」、「両虎戦えば一虎は傷つく」としつつ、「アメリカは前政府の過ちを正し、小異を残して大同につくべきだ」とも語りかけた。
 しかし、バイデン政権の人権重視の姿勢が、新疆問題での「ジェノサイド」批判となって現れ、これに欧州各国が同調したことで、中国側の態度が硬化する。3月23日、外交部は西側諸国(米英など)の新疆絡みの制裁を「その愚かさと傲慢のツケを払うことになる!」と強く非難、人民日報も3月29日に「中国を“ジェノサイド”呼ばわりは国際法に反する大ウソだ」と題する長文の論評記事を掲載した。

次回は5月20日の更新予定 テーマは<米米中関係を巡る人民日報直近の報道-その3->です。

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