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第970回 米中関係を巡る人民日報直近の報道-その3-

(2021年5月20日)

 こうして、3月25日から、米中間は、互いの基本的な位置取りという段階から、個々の核心的問題について応酬する段階に入った。前述の人権問題については、中国側がアメリカの人権問題に関する克明な白書を発表すれば、アメリカ側も4月1日に国務省が2020年世界人権状況報告書で、あらためて新疆の人権侵害を「ジェノサイド」と非難、これに対し、中国は欧州の関連政治家に制裁を加え、2020年末に合意した中欧投資協定は批准が困難になってしまった。台湾問題についても、3月25日に米台が沿岸警備連携で合意すると、4月5日に中国は台湾沖で空母の訓練を実施、すると米海軍も4月7日に台湾海峡を通過、更に4月8日には米上院が台湾との関係強化を盛り込んだ超党派法案「戦略的競争方案」まとめるなど、矢継ぎ早に厳しい方針を打ち出した。こういったアメリカ側の動きに、中国は香港問題で逆襲し、3月31日には全人代常務員会の香港特別行政区基本法関連法規制定(3月30日)に関して、人民日報が二面全面を香港関係の9つの記事で埋め尽くして、内外にアピール、4月3日には2019年香港デモの民主派7人に有罪判決を下し、4月10日までに香港の逮捕者は一万人を突破した。       
 このような背景の下、4月5日、日中対話日中外相電話協議が行われ、中国側は日米首脳会談前の日本側に警告を発し、4月10日には人民日報が「米対外侵略戦争が惹き起こした深刻な人道主義的災禍」という記事を掲載、1953年以降現在に至る約70項目の“罪業”を非難、環球時報も「中国を抑圧する政策が体系化・恒久化しつつある」と警鐘を鳴らした。その一方で、上述の協議では、「日米同盟と共に日中平和条約もある。日本は同様の履行義務を負う」とし、「日中は世界第二、第三の経済国でお互いに協力すべきだ」と呼びかけてもいる。
 日米欧が同盟関係を深める中、中国はこれに対抗してEUの切り崩しを図り、4月7日には習近平国家主席がドイツのメルケル首相と電話をし、「ドイツは第14次5カ年計画を重視し、協力する」「世界は独中の協力を望んでいる。対話を深めるべきだ」との言葉を引き出し、翌日には王毅外相がフランス大統領外事顧問と電話し、「中国はEUのチャンスであり、戦略的パートナーだ」、「気候変動で協力しよう」と呼びかけた。また、パートナー外交を積極的に展開し、既に3月24日から、王毅外相が中東6カ国を歴訪、その後3月31日からは東南ア4カ国外相と、4月3日には韓国外相と会談して連携の強化を図ったのであった。       

次回は5月27日の更新予定 テーマは<その後の米中関係と日本の進むべき道>です。

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