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第972回 自動車産業、20年代以降を見据えてーその1ー

(2021年6月3日)

 2017年4月に<自動車産業中長期発展プラン>を発表し、「2020年には自動車生産台数3000万台を達成し、新エネルギー車では世界ベストテン入り数社、生産台数200万台」という大目標を掲げた中国。しかし、電気自動車(EV)開発に関しては、当初、生産計画総量は急増したものの、約半分が投資目的、補助金目当てで、実質的な生産は進みませんでした。2018年に入り、政府が外資持ち株比率制限の段階的撤廃や合弁企業2社規制の撤廃などの具体策を打ち出すと、外資企業との提携が活発化し、蔚来汽車、威馬汽車といった新興勢力が台頭し始め、バイドウ「アポロ計画」のような、世界100以上の企業・団体を糾合したオープンプラットフォームも登場しました。地方政府もEVの普及、関連インフラの整備に乗り出し、福建省では同年3月までに省全体の高速道路すべてをカバーする188カ所の充電スタンドを設置し、珠江デルタは同年4月までに公共バスへの純電気自動車の導入が5万6000台に達し、タクシーの新エネルギー車化も加速しました。特に深圳は2017年末時点ですでに純電動バスが1万6359台と世界最大規模となっています。2018年4月23日の人民日報が、<新エネルギー車の前哨戦が始まった>という大きな記事を掲載したことは、まさに、こういった動きを象徴したものと言えましょう。       
 同年6月12日、政府は<新エネルギー自動車普及財政補助政策調整に関する通知>を実施しましたが、その意図するところは自動車製造工場や動力電池製造企業の技術水準を向上させて、新エネルギー自動車産業の発展を加速させよう、と言うもので、動力電池の質については105Wh/kg以上が要求され、航続可能距離が150キロ以下の新エネルギー乗用車は補助金が取り消され、EVに関してはほぼ300キロ時代を視野に入れました。こういう政策に対し一部の国内先行企業は、電池では既に200 Wh/kgを視野に入れ、航続可能距離では騰勢500や上海汽車の栄威WARVEL Xが、航続可能距離500キロを実現可能にしました。
 翌2019年は全体としてみると、こうした動きのわりに、はかばかしいものとは言えませんでした。その最大の原因は、やはり、消費者の新エネルギー自動車購買意欲をそそるだけの充電施設などのインフラ整備がまだまだ不十分だったこと、航続可能距離向上の進捗状況が消費者を満足させる程度に至っていなかったことが挙げられます。       

次回は6月10の更新予定 テーマは<自動車産業、20年代以降を見据えてーその2ー>です。

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