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第978回 医療現場のイノベーション-

(2021年7月15日)

 アメリカに次ぐ経済大国にのし上がった中国。その原動力となっているイノベーション力は、医療面にも新しい波を呼んでいます。例えば、ネットを使ったオンライン診療は、広大な国土に散らばる多くの人民の社会保障、とりわけ医療面の平等を推進する上で、革命的な変革をもたらしています。       
 今から6年前の2015年6月、北京宣武病院心臓センターとチベット第二人民医院が国内初の遠隔地超音波接続を実現し、チベットの病人の治療に関わりましたが、同病院はこれを契機に、チベットの26の病院に対し、心臓病に関するリモートトレーニングを行う計画を立て、その後、このような動きは全国に広まっていきました。
 また、一般庶民向けの便利なスマホ診療も盛んになっています。四川大学華西病院の“華西通”が話題になったのは2017年のこと。これを利用すれば、診察申し込みや医療費の支払い、相談、診察なんでも居ながらにして可能になるわけですから、病院から離れた地域に住む人にとってはまさに朗報です。同病院を中心とした約2000名の医者が定時に診察に応じてくれるとのことで、このような形式は医者にとっても大きな効率アップにつながります。しかし、実際の患者の様子を見ない問診だけでの診断はやはり精度が落ちます。この点を解決すべく、オフラインの実在病院との連携もこの5年でどんどん進んでいます。全国最初のクラウド病院、寧波クラウド病院は、全市の各医療機関の医者が正規の勤務時間外を利用して交代で担当し、市・県レベルの地域衛生情報プラットフォームが提供する共通のデータベースと背後の地域全体の実在病院がこれを支えることで精度を高めたのです。
 遠隔診療は2017年1年で延べ6000万例を記録し、モバイル医療市場も急成長を見せ始め、2020年にはネット診療は前年比18倍と驚異的な伸びを示しました。こうした動きを後押ししているのがAIと医療の結びつきです。スマートウオッチを使えばリアルタイムで心電図をはじめとする様々なデータを読み取ることができ、AIはその映像技術やその他の一連の検査から補助的な診断を下すこともできます。2020年は中国にとってまさにAI+医療の元年とも言われているのですが、今後は行政が関連医療機器の認定や関連法規の整備をいかに迅速に行うか、また、各企業が研究投資をどれほど投入していくかが課題になります。

次回は7月22日更新予定 テーマは<現代中国人とプライバシー>です。

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