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第980回 日常生活のモラル向上

(2021年7月29日)

 2019年10月、政府は<新時代公民道徳建設実施綱要>を発し、各地、各部門にその徹底を求めました。既に、2001年に<公民道徳建設実施綱要>が出されているのですが、20年を経て、習近平総書記の下、新たな道徳運動がさらに強化されることになりました。
 同綱要は、共産党による社会主義の核心的価値観をベースに、法治と道徳を結び付け、社会の基盤を整えると同時に、「中華の伝統的美徳」、「民族精神と新時代の精神の発揚」を重要任務に、道徳教育の本格化、道徳的実践の推進、ネットモラルの強化などを掲げています。同年10月末から12月にかけ、人民日報には直接関連の中型記事が16本と目白押しで、政府がいかに力を入れているかが窺えます。
 その後、ここ1年半余り、これに合わせた実情報道も様々繰り広げられました。農村では、旧弊打破がこれまでも散々叫ばれてきましたが、度を越した冠婚葬祭の弊害、様々な過剰なお付き合いによる多額の費用負担や浪費はなかなか収まらず、改善に力が入りました。
今、最も重要視されているのが、食べ物を残さない運動。習近平氏が登場初期の2013年頃、中共中央は<党政府機関節約励行・反浪費条例>を打ち出し、その後、“光盤行動”(食べ残さない運動)が展開されましたが、食糧の安全保障を重視するため、最近また、食物を浪費しない運動が盛んになり、関連法案の審議が進められました。中国では年間350億kg以上、即ち、二億人の国民の一年間分の食糧に匹敵する量が無駄になっています。食べ残すことによる一人当たりの毎食の浪費は11.7%に上るとも。こうした運動は学校や家庭にこれまでにない速さで広まっており、「以前は残すことがメンツだったが、これからは残すことでメンツがつぶれる」とも言われています。
 この他にも、従来から叫ばれてきた観光マナーの他に、マンションなどの高層ビルから物を放り捨て、それが通行人を傷つける問題も依然としてはびこり、最近、罰則が強化されました。果樹園や菜園などの無料サービスで大量に持ち去る人、ショッピングセンターや様々な待合室で、混んでいても平気で寝そべる人、道端に植えられた草花を掘って持っていく人などの問題の他に、最近では、コロナに関連したお取り箸の奨励、禁煙の強化、更には公共の場、特に車内での静謐保持などのマナーも叫ばれています。

次回は8月5日更新予定 テーマは<最近の考古学の成果>です。

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