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第984回 観光業のペットの流行と関連する問題

(2021年8月26日)

 ペットの流行で「ペット経済」もその規模を拡大しています。その消費規模は2019年には全体で2000億元を突破、2020年にはペットに対する一人当たり消費額は6653元、一年で6000元余りと、前年比で19.6%増加しています。ペット用品専門企業もすでに二社がA株市場に上場し、その前途は洋々。もともと、良い鳴き声の小鳥を取りかごに入れて持ち歩く老人や、季節にはコオロギを入れた小さな籠を一杯に背負って売り歩く行商人の姿が見受けられた中国。また、犬は防犯用、猫はネズミ捕り用に広く買われていました。以前、浙江省の金華ハムの工場へ見学に行った時には、たくさんの猟犬に吠えたてられました。       
 経済が発展し、ファッションあるいはステータスとしてのペット、あるいは、核家族化が進む中、心の慰めとしてのペット飼育が盛んになってきたことは必然的とも言えましょう。GDPが8000ドルを超えるとペット飼育が盛んになると言いますが、中国はすでにそのラインを突破しており、犬猫の飼育総数は一億匹に達しています。これに伴い、ペットの食品・医療や飼育・訓練サービス業など関連産業も発展しつつあります。日本のような猫カフェもお目見えし、新しい職業として、ペット健康ケアマネージャーも登場しています。
 その一方で、ペット飼育に関する諸問題も噴出しています。動物病院などの基準が未整備なため、法外な治療費を吹っかけたり、そもそも無資格者が治療したり、といったケースが後を絶ちません。また、ペットの虐待や、ペットによる傷害事件、糞便などによる環境汚染も深刻です。見逃せないのは野犬の横行。野犬の増加は当然ながら安易な捨て犬の増加が原因。野犬に咬まれたり、夜中の吠え声に怯えたりでは、市民生活が脅かされます。
 ここ数年、マナーを遵守したペット飼育を呼びかける新聞記事が増えています。まずは、放し飼いにしない、散歩時にはリードを必ず装着する、糞便は必ず飼い主がその場で処理する、といった基本マナーから。更に高層マンションが林立する都会では、隣家の犬の吠え声やエレベーター内の尿の匂いなどがトラブルの種になっています。このような問題に対し、各地の行政機関も様々な対策を打ち出し、西安市では<飼い犬制限条例>を制定し、飼い主の責任だけでなく、管理機構の法的責任も明確にして行政処分も辞さない姿勢を示し、また、武漢などでは、地域コミュニティによる監督ボランティアチームも結成されています。

次回は9月2日更新予定 テーマは<精神衛生対策あれこれ>です。

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