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第985回 精神衛生対策あれこれ

(2021年9月2日)

 経済発展に連れて人々の心の病がクローズアップされるようになりました。90年代に高度経済成長の波に乗った中国でも、2002年頃から精神衛生対策が本格化し、<中国精神衛生対策プラン(2002-2010)>が打ち出され、2年後には<精神衛生対策の一層の強化に関する意見>が出、中国赤十字会も心のケアが必要な全国3000万の青少年に対する<心霊陽光>プロジェクトを始めました。当時の様子についてはすでに本コラム第335~336号で詳述していますので、バックナンバーをご参照ください。       
 それから10年以上の月日が過ぎ、最近の取り組みはどうなっているのでしょうか。昨年終了した第13次5カ年計画期間までの動きをトレースしてみましょう。
 2012年、1985年の草案策定以来懸案になっていた<中華人民共和国精神衛生法>(全7章85条)が漸く制定され、2013年5月から正式に実施されました。同法は、精神障害者を「患者」ではなく「一般市民」として扱い、その権利擁護を第一目標とし、精神障害者のリハビリを明確に提出した点で画期的と言えましょう。また、重度の精神障碍者は無料で基本的公共サービスを受けられ、特に貧困者の場合が政府の費用援助で医療保険に加入でき、最低生活保障も受けられるなどの措置は大きな朗報となりました。
 これを踏まえて、政府は2015年に<全国精神衛生工作プラン(2015-2020)>を打ち出し、2020年までに精神科医を4万名に増やし、70%以上の郷鎮(街道)に精神衛生総合管理グループを設置する方針を示しました。当時、中国では510万人(1600万人という指摘も)の重度精神障碍者に対し、精神科医は2万名余りに止まり、人口10万人当たり1.49名という少なさで、その対策が急務だったのです。しかし、精神病と言っても様々です。これを通常の鬱病患者まで広げると、中国全土の15歳以上の精神病患者は1億人に達するとも言われ、しかも、年々20%以上の割合で増え続け、なおかつ3000万人余りの児童が精神的問題を抱えている、という統計もあります。最近、“躺平族”(寝そべり族)が話題になっていますが、これもその一例と言えましょう。小中学校へのカウンセラー室設置、大学生への進路指導相談室の設置、更に自閉症に対するサポートシステムなど、対応する社会環境整備もようやく緒についています。

次回は9月9日更新予定 テーマは<最近の原発政策と現状>です。

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