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第989回 カーボンニュートラルと中国-その1-

(2021年9月30日)

 温室効果ガスに関する取り組みでは1997年の「京都議定書」がまず頭に浮かびますが、排出量削減の法的義務が先進国にのみ課せられていることで先へ進まず、2015年の「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」におけるパリ協定でやっと合意にこぎつけたことは周知のとおりです。パリ協定の画期的点は、排出削減努力の枠組みを途上国にも課したことで、中国も2030年までにGDP当たりの二酸化炭素排出量を2005年比60~65%削減し、2030年頃には排出のピークを達成するとしました。2016年の国別温室効果ガス排出量シェアで中国は23.2%(日本2.7%)を占めているのですから、その意味は小さくありません。       
 2020年9月の国連総会で、習近平国家主席は更に2060年までにはゼロにすると表明し、パリ協定は地球を守る上で必要な最低限の行動だとして、自らそのイニシアチブを取る積極的な姿勢を示しました。これは、アメリカに取って代わって中国が世界の大国としてグローバルガバナンスをリードする意欲を示したものとも言えます。
 しかし、その後、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」採択から5年目に約70人の各国指導者がオンラインで会合をし、気候変動への取り組みに関する演説を行った際、習近平国家主席はより具体的な数値目標として、GDP単位当たりの二酸化炭素排出量は2030年までに2005年比で65%余り削減、一次エネルギー消費に占める非化石燃料の割合は約25%増と控えめな目標を示すに止まりました。そこには国内事情との兼ね合いや先進国との駆け引きといった要素も見え隠れします。先進諸国は中国をもう途上国扱いするのをやめようとしていますが、そうなれば、中国は先進国並みの扱いということで、より高い削減目標をつきつけられ、それを達成する努力をしなければなりません。しかも、中国は途上国向けの資金援助も受け取れなくなることになるでしょう。この点をどうソフトランディングさせるかが、次の国連気候変動枠組み条約締約国会議の大きなテーマにもなります。トランプ時代にパリ協定から脱退したアメリカは、バイデン政権になり、また復帰しました。中国はこれを、アメリカと協調することで「新たな二大大国関係」によるグローバルなリーダーシップを認知させる絶好のチャンスとも考えています。この秋の成り行きが一層注目されます。

次回は10月7日更新予定 テーマは<カーボンニュートラルと中国-その2->です。

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