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第991回 カーボンニュートラルと中国-その3-

(2021年10月14日)

 2017年には環境汚染に対する各地方の具体的な取り組みが一斉に展開されました。中国の五カ年計画では、初年度に中央政府の大方針が提示され、二年目に各地方がそれに沿って取り組みを開始するのが通例ですから、その意味では当然ですが、2017年2月10日の人民日報が、各一級行政区が各地の人民大代表大会で採択した2017年環境汚染対策の内容を、大気・土壌・水に分けて詳細に紹介した記事は壮観でした。また、2018年1月1日から施行されることになった環境保護税法についても、環境汚染物と当量値表が詳しく紹介されました。       
 こうした本格的な取り組みの結果、2018年は二酸化炭素の排出量を前年比6.7%削減し、2015年比では18.9%削減と、第13次5カ年計画で掲げられた2015年比18.5%削減という目標を繰り上げ達成しました。こういった成果の背景の一つに再生可能エネルギーへの取り組みがある事は言うまでもありません。第12次5カ年計画最終年の2015年に4.8億KWだった再生可能エネルギーの発電量は、3年後の2018年には7.3億KWと5割以上増加しました。また、これらを支える国の環境保護支出も2015年の4802.89億元から2018年には6352.75億元と3割以上の伸びを示しています。       
 2019年末に公表された<気候変動対応に関する中国の政策と行動2019年度報告>は、緑色低炭素発展の枠組み形成に社会全体が参加するという状況が漸く形成されてきた、と指摘しています。2018年以降の積極的かつ具体的な取り組みが功を奏し始めたと言えましょう。政府の強力な指導の下、緑色発展を企業責任として取り組む企業が急速に増え、工場への低炭素技術の導入、スマート化・清浄化が推進されています。2018年4月、中国科学院や北京大学教授らによる「生態系による二酸化炭素固定」プロジェクトチームが、中国の陸地の生態系(森林・草地・灌木・農地)などの二酸化炭素貯蓄量とその分布を踏まえて、初めて中国の生態系が有する全体的二酸化炭素固定能力を算出しました。中国の森林被覆率は2021年現在、国土の23.04%で、森林による二酸化炭素貯蔵総量は92億トンに達します。政府は、2030年には2005年比で森林被覆率を28~29%まで増やすことができると試算しており、マングローブや塩沼の二酸化炭素貯蔵能力の開発も加えて、一層の能力アップを図っています。

次回は10月21日更新予定 テーマは<産学協同の進展>です。

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