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第995回 住宅問題-その1-

(2021年11月11日)

 2019年1月の本コラム(第853~4号)で取り上げた中国の住宅問題ですが、最近また、不動産大手の恒大グループの経営危機問題が取沙汰されるなど、その実情に関心が集まっています。第13次5カ年計画当初、政府は「住宅は本来住むためのもので、投機の対象ではない」という方針を明確に打ち出し、農民出稼ぎ労働者の市民化を進める上で、戸籍制度の改革と共に有効需要を拡大して住宅市場の安定化を図り、一方で、住宅購入あるいは長期賃貸を奨励し始めました。この賃貸住宅の奨励は、それまでの住宅政策と一線を画し、中国の住宅政策が新たなステージに入ったことを示すものでした。では、その後2年半が経ち、現在の動向はどうなっているのでしょうか。       
 2021年2月3日、人民日報が、住宅問題に関する浙江工業大学の虞暁芬副学長へのインタビュー記事を掲載しました。その中で虞氏は、中国の大都市が抱える問題として、①供給量の不足、②住宅価格の高騰、③賃貸市場の構造的欠陥、を挙げ、それが、新市民・若者の住宅難を引き起こしている、と指摘し、喫緊の課題として、住宅価格の投機的上昇の抑制を訴えました。同氏は、第13次5カ年計画が終了した2020年までに、中国は建て替えによって5000万の住民をバラックから脱出させ、同時に、3800万人の貧困住民が公共賃貸住宅に入居し、2200万人余りの貧困者が賃貸補助を受けたが、この間、新しい都市化の波に連れ、住宅保障の重点は大都市における新市民や若者の住宅難に変化したことを指摘し、「2019年に本籍地を離れている人口は2.8億人、そのうち2.36億人が流動人口で、政府が建設する公共賃貸住宅では到底カバーしきれず、賃貸市場も、これらの人の経済能力に対応できる住宅源を欠いている」と指摘しています。       
 そこで2019年に提案されたのが、「政策的賃貸住宅」の整備です。「政策的賃貸住宅」とは、政府の指示を背景に、社会の各方面が様々なルートで資金を提供し、周辺の同レベルの住宅より低価格の賃貸住宅のことで、新市民の経済能力に応じて、「ベッド」、「小部屋」、「1DK」を提供して安住の地を与え、その後、一定の収入を得たのち、一般の住宅市場に参加させよう、という計画です。「政策的賃貸住宅」は同年末には全国13の都市でテスト的に展開され、政府・銀行・市場が一体となった持続可能なモデルが形成されつつあります。

次回は11月18日更新予定 テーマは<住宅問題-その2->です。

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