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(2019年5月9日)
紛争への対処で更に難しい問題は、会社経営そのものにかかわる問題でしょう。 国の法律にかかわる問題や、地方政府の規則、またこれらの規則がある日突然変更されるということはよくあることで、知らずして抵触すると罰則を科せられる恐れもあります。 日本的には「法律通りにやれば問題はないはず」という認識ですが、中国の法整備は歴史も浅く、環境の変化によって変更されたり、地方政府によって内容が異なっていることは普通なのです。 実務上よくあるのは、政府の担当者によって解釈が違うことです。開発区と市政府では解釈が異なったり、中には地方政府の解釈に委ねられている部分もあることから、なかなか会社として納得のいく結論を見いだせないケースに多くぶつかります。 ここで現地会社が困るのは、日本の本社につじつまの合った説明が出来ないことです。 往々にして日本側は中国の現地事情に詳しくない場合が多いので、法律に定められていることでも、政府の関係者と長い時間交渉しなければならないという中国の現地事情は、到底理解できないものです。 この対応策として有効な方法は、日本側からも認められている第三者をかませるということです。 中国での問題解決に熟知している日本の弁護士事務所や会計士事務所で中国にも拠点を持っているところが望ましいですが、現地の問題解決に参画していただくことで、日本サイドへもタイムリーにレポートし、情報を共有することと同時に第三者の目で判断しているという客観性を持たせることが出来ます。現地の理解につながる一つのツールとして有効に機能できると思います。 特に知的財産権侵害の問題等では、現地会社だけでなく会社全体に関わる問題であることから、本社マターとしてグローバルに体制をとり戦略的に対応することが必要でしょう。 現地で起きた問題でも日本側と密接に情報共有を行うことは、一ヶ国で起こった問題がグローバルに会社全体に影響を及ぼす事例も多い昨今、企業ガバナンスの面で問題の拡散防止や解決に重要なポイントとなるでしょう。
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