★バックナンバー一覧
(2019年10月10日)
中国にある日系企業の中で「働く意識調査」を実施して驚く結果を見ました。これは「リテンション」を考えるに当たり、日系企業の中国人社員が会社に何を求めているのかという課題に対して、外部団体へ委託して実施されたものでした。 問題の背景は近年日系企業の就職人気が低くなってきているということです。 以前は知名度や処遇についても一定の優位性があったことから、就職やその後の「リテンション」でも安定していたのですが、ライバルであるヨーロッパやアメリカの外資系企業に加え、中国国内企業の人気が高くなっており、処遇面でも日系企業の人気は下がってきています。 調査実施に当たり経営側で想定されていた問題意識の一番は「給与」でした。 つまり中国人社員は給与面への関心が高く、簡単に給与の高い他社へ移動してしまうのではないか、企業に対するロイヤルティは低いのではないか、というのが経営側の認識でした。 調査の結果は事前の予想と反し、モチベーションのトップは「発展空間」でした。「給与」は全体の上位ではありますが、トップではありませんでした。 仕事を通じて自己の価値を高めるチャンスがあるか、勉強する環境があるかという意味での「発展空間」に意味が有るということです。 最近の若手社員の中には、仕事をしながら大学でMBAを取得したり、業務に関わる資格を取得する人も多く、これらについても会社としてプラス評価をしたり、日本を含む海外研修の機会が与えられることはかなり魅力的な施策といえるでしょう。 続いて調査結果の上位にあったのは「福利厚生」等、社員に対する配慮があるかという項目です。 このように中国人社員のモチベーションは「会社」より「個人」に重きが置かれていることがわかります。 この調査でわかったことは、日本企業の経営者が想像している現地社員の会社に対する意識は日本人を想定しているものであり、その違いの根底には両国の文化や歴史の違いが存在するということでした。 日本社会では終身雇用や年功序列という概念の名残の影響か、社員に対し企業への「ロイヤルティ」を求める傾向がありますが、中国における企業に対する従業員意識は、自らの意思で企業を選択して、企業の発展に貢献すると同時に自らを高められるという意味でより対等な「エンゲージメント」という概念がフィットしていると思います。
※サイトの記事の無断転用等を禁じます。