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(2019年12月5日)
中国会社の現地化を進めるに当たっての最大のキーポイントは「権限移譲」です。 多くの日系企業に見られるのは、若くて日本でのマネージャとしての経験も少なく、海外経験も無いような人にも現地の部長や本部長という要職を任せているケースです。 現地での経験豊富な中国人スタッフを差し置いて、上位職に就かせているケースが多くみられるのは、日本企業の風潮として「日本企業文化を支えられるのは日本人しかいない」とか、「現地の日本人社長が日本人社員しか信用できない」というような意識が根底にあるのかもしれません。 20年前に日本からこぞって中国に進出した頃は、日本人社員が技術・資金を持ち込んで日本のモノづくりを教えたり、人件費の安さで生産性の高さを求めたりする時代がありましたが、ここ10年で様変わりしています。 人件費はもはや日本と変わらず、技術も概ね肩を並べている現在、現地会社のマネージメントも自ずと変わらなければならない時期がとうに来ているのです。 ある日本の一部上場企業の中国独資会社で、10年前に行った中国人幹部社員との懇談会で出た言葉ですが、「日本から来る駐在員は3年から5年で帰任するが、我々はこの会社に骨を埋める覚悟で働いている。」という発言がありました。 正にこの言葉に表されているのは、現地の会社は日本企業のコピーではなく、中国で独自の競争力を持つ「中国企業」とならなくては競争に勝てないということでしょう。 そもそも中国で事業を起こすことの意義を考えると、会社が利益を上げることで税金を払い雇用を安定させ、現地の社員が気持ちよく働ける環境を創ることです。 つまり、中国企業としての独立性を持たせ、中国の商習慣や業界の環境を考慮して「中国企業」としての競争力を身に着けるためには「現地化」がキーポイントとなるでしょう。 ここで、もう一つの課題は日本側本社の理解度です。日本サイドで一番気を遣うのはコンプライアンスの問題です。 つまり、現地に権限移譲する場合、どのようにコンプライアンスリスクを取っていくかということが課題になります。 この課題は勿論日本サイドでも様々な方法で企業秘密保持の方策が取られており、海外においても基本的には変わりはありません。 違いがあるのは意識の差です。国民性による部分もあると思いますが、国によってコンプライアンスに対する意思が異なるのは事実でしょう。 これを埋めるのは継続的な「教育」以外に無いと思われます。
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