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(2020年7月9日)
「新型コロナウイルス」感染予防対策を前提に、中国ビジネスにおいてもリモートワーク等の働き方が急速に拡大しております。 これに伴い企業としては、このような急激なビジネス環境の変化に対し、どのように組織をマネージメントしていけば良いかということが、喫緊かつ新たな課題になっています。 中国に進出している日系企業にとって、「企業秘密の保持」や「人材の引き抜き」等に対してこれ迄も日本以上に様々な防止手段を講じてきましたが、これまでの方法は全く役に立たくなることも想定せざるを得ない状況です。 これまでのチェック体制は、規則の整備を前提に「社内監査」等、最後は人によるチェック体制を取っているケースが多く、中国の本社組織や時には定期的に日本からの監査チームがチェックするというやり方が効果的と考えられていたと思います。 しかし、これからは人が現地に出向く回数は極端に減らさざるを得なくなると予想されますので、こちらもリモートでの対応を模索しなければならないでしょう。 一番のネックは、会社の工場や支店、営業所、代理店等への監視体制において、これまでのような「人の目」が行き届かなくなり、とくに拠点の業務の様子は目隠し状態に置かれる可能性があります。 勿論監視カメラの性能もかなり高度になっており、カメラを大量に設置することによって定点部分の監視は可能ですが、携帯電話等の通信手段の発展によりどこからでもいつでも外部との連絡や情報の受け渡しが可能となっている状況で、不正防止につながる業務のチェックは難しくなるでしょう。 情報の流出の一例として従業員の突然の退職があります。 中国の労働契約法では、労働者側からの労働契約解除について解除理由に制限はありません。つまり理由が解らず突然退職の申し出があるというケースが起こりえます。 会社側に法律・法規上の違反行為がない場合、労働者は30日の予告通知なく労働契約を解除することはできませんが、現実ではなかなかルール通りに行かないことが多いのです。 ある会社で、会計の社員が突然退職届を会社へ提出してその日から出社しなくなったケースがありました。 コンピューターを調べると、会計のデータが消されており、会社に損失を与えた上に社内秘密データの持ち出しの可能性もあり、連絡を取ろうと試みましたが通じません。 後日、工会を通じて連絡を取りデータの復帰や損害賠償について話をしましたがこれに応じず、逆に会社に法律違反があるとして労働仲裁を提訴してくるという展開になりました。 コロナの感染防止策による職場における日常のコミュニケーション不足や、人の交流の減少により人の目が行き届かなくなった結果、この例のように退職の直前までその兆候に気付くことが出来ず、トラブルを起こしやすくなることに注意が必要です。
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