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(2020年8月6日)
「新型コロナウイルス」感染予防対策を契機に、全世界的なリモートワーク等の働き方改革が急速に拡大しております。 中国ビジネスにおいてこの流れに対処するためには、日本企業としてもこれに向けた準備が早急に必要になります。 ポイントは、これまでのように日本側からの目が行き届かなくなることを前提に組織マネージメントを再確認することが重要と考えます。 これを機会に思い切って「権限移譲」を前提とした「現地化政策」を推進するというのも一つの方法だと思います。 会社の状況はまちまちですので、中国ビジネスが長い会社もあれば短い会社もあり、現地人財の状況が違うことからそれぞれの条件に合わせて推進しなければなりませんが、いずれは思い切った現地化が企業の存続に繋がっていく道だと思います。 「権限移譲」といっても、現地人財を責任者に任命して責任を負わせるというような単純なものではありません。人財教育やコミュケーションを通じた信頼関係の構築が大前提となることは勿論ですが、日本の企業体質よりももっと厳格な契約の整備が必要です。 つまり、信頼関係の上に「権限移譲」が成り立ちますが、これと並行して「契約」によって「権利と義務」を明確に規定することが必要です。 企業にとって一番基本になるのは「コンプライアンス」の問題です。一般的な日本企業のような守秘義務規定では、道徳的なニュアンスが強く抑止力がありません。就業期間は勿論のこと、退職後においても「退職後、会社で知りえた秘密事項を他社に漏らしてはならない」という程度の取り決めしかない場合、中国では秘密保持義務の合意としては不十分であるとして合意は無効であると判断される可能性があります。 中国ではどのように規定すればよいでしょうか。中国では労働契約において営業秘密の保持に関する条項を規定することが認められていますが、「営業秘密」としては「規定された営業秘密であること」や「秘密保持措置を講じている技術情報及び営業情報」であることが必要であり、対象者もこのような営業秘密にかかわる業務担当者であることが合理的です。 現実的には、入社時や業務担当がこれに関わる部署に移ったタイミングで取り交わすことがポイントです。 更に、「コンプライアンス」の観点から退職後に同業他社へ移ることや同業で起業することを制限するための「協業避止契約」を結ぶことが出来ますが、こちらは対象者が高級管理職や営業秘密保持義務を負う社員ということになります。 この契約は退職後最長2年の期限があること、更にこの期間に毎月一定の経済的補償を支払う必要があります。 この規定に違反した場合、対象者が支払うべき違約金を約定することが許されていますが、更に転職先企業に対し、当該人が「協業避止契約」の契約期間内であることを通知し、採用の抑止を講じるという対応も可能です。
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