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(2021年9月9日)
中国で仕事をする上で、「大陸気質」で「起業意識」が強い現地スタッフと、「島国気質」で「就社意識」が強い日本人駐在員との仕事に対するスタンスには大きな違いがあることに注意が必要です。 勿論、日本社会の中にも近年働き方に対する考え方は大きく変化してきていますので、違和感を感じない会社もあるのではないかと思われます。つまり日本の会社も従来の「日本的経営」から「働き方改革」に表れているように、働き方に多くの選択肢が持てるようになってきました。もともと中国社会は個人の利益を第一に優先しますので、中国式に近づいたともいえるでしょう。 以前の中国の労働契約には、職務が明確に規定されていたので、中国人社員の感覚はあくまで希望した職務を行う為に就職したという意識があります。これに対して「日本的経営」は、労働契約に職務の規定はなく、会社に入ったら「転勤」「異動」は会社命令で自由に行えることになっています。中国では、労働条件を含めた労務の提供と対価の支払いは対等の関係にありますので、個人の生き方に沿わない労働環境を強要されると辞めてしまうリスクがあります。日本の企業のような突然遠方の支店への転勤や、経験のない他の職務への異動に対しては当然大きな抵抗が起きます。このように、日本と中国では会社に就職する意識が基本的に異なっていることを理解して、日本では当たり前と思われる「業務命令」であっても、事前によく理解を得ておく必要があります。 このような「就職意識」の違いは信賞必罰の考え方にも影響しています。日本企業では一般的に、就職後はできるだけ長く働こうという気風が根底にありますので、業務上の不正行為等があったとしても、今後の反省と努力に期待して信賞必罰も一般的には緩い対応が多くみられます。中国では「大目に見て今後に期待しよう」というのは逆に不正の温床を広げることになってしまいます。 ある国営企業の中国人幹部から教えてもらったことがあります。「不正行為を行った案件では、関わったスタッフがどのような重要ポストにいても、規則に従い即刻処罰し、ポストから外すことが再発防止の最善策です。業績を心配して緩い処分に留めると、水面下でますます不正が広がるのです。」 そして、処分に当たっては必ず中国人幹部スタッフ、工会委員長等を決定委員に入れて調査を行い、会社規則に従って処分を実施するという様に、手続きを踏むことが肝要です。
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