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(2018年10月4日)
中国で事業を展開するに当たり出資形態として、合弁形態と独資形態のどちらを選択するかについて話を進めてきました。 日系企業の現状はどうかといいますと、2001年に中国がWTO加盟以降、外資に対する規制緩和が進んだことを背景に独資形態(外商独資企業)による進出が増えているようです。 勿論、これは1990年代に合弁形態で進出した企業の失敗例に鑑み、合弁パートナーとの紛争リスクを回避することも大きな目的の一つです。 合弁形態での失敗例は他人ごとではなく、現実に数多く発生しました。原因の多くは、相手が国営企業であることから、利益配当に関して将来の発展の為に投資に回したい日本企業の思惑と、多額の配当を求めるパートナー企業との企業文化の違いや、日本企業からの営業秘密漏洩のリスク、ガバナンスに対する理解の違いなど、夫々の企業文化や日中文化の相違に起因した経営方針の違いによるものです。 私も、現地で設立された中外合弁企業に派遣され、設立3年で国営企業である合弁パートナーと経営方針の違いによる紛争となり、外商独資企業に転換した経験がありますが、企業にとっては時間とコストの大きな損失であり、事業継続すら困難になるケースもあります。 このように、中外合弁企業として事業運営するに当たっては、将来の合弁解消や紛争に備えて事前に準備する必要があります。 まず、組織ですが、企業の最高意思決定機関は「董事会」になります。この「董事会」を招集する董事長は日本でいうと会長のような立場に見えますが、董事長こそが法定代表人であり経営のキーマンです。この董事長のポストをどちらがとるか、また出資比率により董事会への出席董事の比率が決まるため、この点に留意して合弁条件を決めておく必要があります。 私の身近に失敗した日系企業がありました。空調関連機器製造会社である日本企業C社は、中外合弁企業として1990年代初めに同じ開発区に進出していましたが、5年ほど経過した1月になって、正月休暇で帰国した日本人駐在員が中国に戻らず現地で問題になりました。我々隣人にも知らされず、日本の新聞報道で中国撤退が報道されました。 C社の合弁形態はどのようなものであったかといいますと、日本・中国・香港3社の合弁形態をとっており、出資比率はどの会社も過半数以下でした。肝心の董事長は中国側から派遣、製造の責任を持つ総経理は日本側、経理は香港側から派遣されていました。 経営方針の違いによる撤退と報道されましたが、結果としてその後の損失を回避するため、生産設備を放置したままの撤退を余技なくされたもののようでした。 次回もこの続きとさせて頂きます。
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