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(2022年6月16日)
中国での都市ロックダウンもようやく6月1日をもって大部分が解除され、日系企業もようやく出勤可能になったとの連絡があり、長かったロックダウンもたちまちコロナ前の風景に戻ったようです。 上海に住む中国人の友人の話では80日ぶりの外出だったそうですが久々の通勤にも関わらず、混乱もなく皆何もなかったように普段通りの通勤風景だったという事です。何はともあれ元の生活に戻れたことは大変良かったことですが、教訓としては今後もしも同じような突発の事態が起こった場合には、国の命令一つで自国民外国人を問わず突然すべての行動の自由が奪われるリスクがあるという事です。個人の行動は勿論、企業活動も停止を余儀なくされるという事は、中国に投資している企業にとりましては重大なカントリーリスクと言えるでしょう。 今回の教訓をカントリーリスクとしてどのように今後に備えるかは極めて困難な課題と言えます。過去に各企業で準備したBCP・BCMのマニュアルがどこまで機能するかには大きな疑問が生じる現実となりました。また、一方で中国の情報統制に関わるリスクも認識しておく必要があるでしょう。中国は世界一の監視カメラ大国となっています。2000年の調査で人口に対する監視カメラの数の多い世界都市10の内8都市が中国であったことは驚きです。既に2億台の監視カメラが設置されているといわれており、将来は8億台つまり2人に1台の割合で設置されるともいわれています。更にコロナ対策で中国国民は勿論、海外からの渡航者に対しても健康観察の為「健康コード」アプリのダウンロードが求められておりますが、これが無いと公共交通機関は使えず、オフィスビルや店舗にも入れないことから実質的には義務化されているといっていいでしょう。 最近では「天網」と呼ばれるAIを使った監視カメラのネットワークが開発され、犯罪の解決や防止に役立っていることはありますが、同時に国民のあらゆる情報が登録されていることからプライバシーがほぼ筒抜けになっているのが実状です。我々外国人にとっても、「健康カード」アプリにはパスポート情報等の個人情報を入れることから日常の行動も結果的に監視の網に入ってしまうことになります。外国人にとってこのような情報統制、監視体制は日常受け入れ難い環境であり、それだけでかなりのストレスになることもあります。中国現地で仕事をする際には、このような現状を頭において、あらぬ誤解を生じないように行動に注意することが肝要という事になります。 また、「健康コード」アプリは省毎に異なり、情報の格納も別々になっているようなので、省をまたぐ移動の際にはホテルのチェックイン等で情報の確認が即座にできないケースも想定して準備しておくことが必要と思われます。現地に行かれる際にはコロナ対策等での急な封鎖等不測の事態に備え、常に携帯電話等の通信手段を確認して携行することがトラブル対応に必要です。今の中国での行動はいつでもトラブルに対応できるよう、単独でなくできるだけ複数でいるように心がけた方がよさそうです。
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