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Last Update:2023/9/7
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コラム 中国ビジネス噺

第61回 これから中国へ赴任される方へ(33)

(2023年9月7日)

   いよいよ中国から日本への団体旅行が解禁され、本格的に日中間の往来はコロナ前の状況に戻ろうとしています。ところが日中間の人の交流が再開され、経済的にも双方にメリットのある環境に戻ることが期待された矢先、8月24日に原発処理水の海洋放出が実施されたことにより中国国内で反日運動が始まったという報道がありました。
 2000年以降中国における大規模な反日運動が何回か起きています。2005年、学生を中心としたデモ隊が上海日本領事館に向け、レンガ、ペンキ、卵を投げつけ領事館の建物が損壊し、暴徒化した学生は日本料理店や日本製の車をターゲットにして破壊行動を起こしました。実際には日本料理店や日本車のオーナーには中国人が多く、中国人が被害にあうことになってしまいデモは完全に目的を脱した「烏合の衆」になってしまいました。また2012年には尖閣諸島問題を引き金に、「日本軍国主義」への反対等を掲げ、インターネットの呼びかけによって各地でデモが発生しました。また、日本製品に対する不買運動や、日本のスーパーマーケットへの破壊活動等が広がり、ついには中国50都市以上で反日デモが発生し、日系デパート、レストラン、日系自動車販売店等が標的となり、破壊や略奪にまで発展するという事態になってしまいました。
 中国でのこのような行動が起きる背景には単に日本への反発だけでなく、学生や民衆の様々な不満が反日運動に乗じて爆発したという要素もあるようですが、このように何かのきっかけで問題が大きくなり暴動に繋がった事実がこの20年間だけでも数回ありました。そこで我々が中国で活動する上では、その時の中国政府の動きや報道に注意すると同時に、普段の行動にも注意を払う必要があります。特に9月から年末にかけて「抗日記念日」がありますので、この日はテレビの報道も「抗日」をあおる内容が多く、外での活動や外食等で日本人が多数集まって目立つふるまいをすると思いもかけないトラブルに巻き込まれる可能性もありますので、十分に気を付ける必要があります。
 9月3日「抗日戦争勝利記念日」:1945年日本が降伏文書に署名した日を記念して定められました。9月18日「抗日記念日」:1931年満州事変勃発の発端となった柳条湖事件の日です。12月13日「抗日記念日」:1937年に日本軍が南京を占領した日で、「国家哀悼日」とされています。この中で、9月3日「抗日戦争勝利記念日」と12月13日「抗日記念日」は2014年に国家レベルの法定記念日として定められており、毎年政府による記念行事が行われます。9月3日「抗日戦争勝利記念日」今年は78周年記念日になります。
 上記は日中間で起きた歴史的出来事の日でありますが、中国国内においては都市ごとに温度差はあるものの、記念式典が行われたり、テレビで特集番組が放映されるなど、愛国運動が展開される日になっています。町の中のレストランや繁華街で、不用意な発言から予期せぬトラブルに巻き込まれることもありますので、特に直近の反日機運が起こっている状況の中にありましては、企業としてまた個人として十分な注意が必要です。また、これらの日の前後では特に日本のテレビの検閲も厳しくなるのが通例で、ホテル等公共の場所で映るNHK等の番組が、不適切な言動や映像と判断されると突然放映が中断されることがあります。日本人どうし、又中国人の友人との会話にも話題には充分注意を払う様にしましょう。

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