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(2024年4月11日)
コロナが収束し中国へ業務出張や駐在に出かける方も増えてきました。折角中国へ出かけるのですから、休みの時間に街を散策したり、観光地に出かけたり見分を広げることは良いことです。以前は地域によっては立ち入り制限のある場所もありましたが、観光地等は自由に行き来できる状態であまり気を遣うこともありませんでしたが、最近日本人を始め外国人の取り調べや拘束事例が多くなってきているのが実情で気を付ける必要があります。 中国では2023年7月に「反スパイ法」が施行されました。日本企業から出張するケースや駐在する場合でも、反スパイ法違反の嫌疑をかけられトラブルに巻き込まれることも考えられますので、これまで以上に充分注意する必要があるでしょう。中国には「反スパイ法」が出来る以前から立ち入り制限区域や撮影禁止地区等があり、認識しないで入り込んでトラブルになることがありました。2010年9月にフジタの社員が突然拘束されて、当時は民間企業がこのようなことに巻き込まれることはあまり無かったことなので中国に駐在員を送っている企業の中では話題になりました。フジタは旧日本軍の化学兵器処理事業に関連する現地調査の為に河北省に入った際、上海の現地法人の2名と東京本社所属の2名の計4名が中国当局に拘束されました。4人が調査に入った石家庄市内の区域は中国の軍事管理区域であり許可なく侵入と撮影したことが拘束の理由でしたが、フジタの社員は業務で入っており手続きの詳細は分からないもののまさか拘束されるとは思っていなかったと推察されます。 この事件は尖閣諸島で起きた漁船衝突事件で日中関係が悪化した後に発生したなど、日中関係の状況にも影響された可能性もあり、両国間の政治的な状況の変化にも充分配慮する必要があります。従って、この事件の解決には単に事実確認の証明だけでなく、フジタ本社、日本大使館、日本政府の政治的な動きがあり、3人は間もなく開放、1名は1年間もの拘束を強いられ罰金を支払い開放され帰国に至ったという事になりました。 元々中国にはこのような通常業務と思われる状況でも思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。そして今回の「反スパイ法」施行によって嫌疑をかけられる可能性が一層高まる可能性が出てきました。今回の「反スパイ法」の特徴は嫌疑をかける範囲が広がったことと、どこまでが違法かという境界が不明確という事です。つまり、規定はありますがどのような状況が違法になるかが不明瞭なので、嫌疑をかけることが容易になってくる可能性が問題視されています。今回は個人の行政責任に加えて組織が違反した場合も行処罰が課される、所謂「双罰制」が導入され、警告、15日以下の行政拘留、罰金が科せられることになりました。また、企業の反スパイ法容疑が認定された場合には営業停止処分が科せられることが想定されますので注意が必要です。
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