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 第百回 人民元切り上げ問題-中国の主張


9月4日からタイのブ−ケットで開催されたAPECの財務相会合、9月20日か ら、アラブ首長国連邦の首都ドバイで開催されたG7では、いずれも中国の元に対する切り上げ要求が焦点になりました。「日本が火をつけ、アメリカが薪をくべ、一部の国が煽って人民元を焙りたてている」と中国側が非難するこの問題ですが、アメリカ、日本とも安い中国製品の流入に青息吐息の国内一部産業の突き上げを受け、選挙間近という政治の季節でもあり、一挙に火が燃え上がったという側面もあります。
勿論、元に対する議論は最近になって始まったわけではなく、ほとんど固定相場に近いペッグ制を維持しつつ、経常的に貿易黒字が続き、外貨準備高もますます増え、輸出も好調となれば、一方でデフレに喘ぐ日本などの国から切り上げ要求が起こるのも当然でしょう。これに対し中国側は、「1997年からほぼ1ドル8.28元を維持しているとはいえ、その間の各国の物価上昇率には顕著な開きがあり、この10年弱で中国の上昇率は50%強、対するアメリカは20%台半ばで、実質的には大幅に切り上っている」と反論しています。また、中国は97年のアジア通貨危機でタイのバ−ツが"熱銭"、つまり国際的な投機資金に振り回されたことを教訓としており、その意味 でも変動相場制への以降に警戒感が強いのです。
当面の中国側の主張は、切り上げれば「輸出が不調になって国内が不況になり、失業者が増えて社会不安になる」、「安い外国製品の流入でデフレが起きる」、「外国からの投資が減る」、「ただでさえ国際競争力が無い穀物農家が一層苦境に立たされ、農業が大打撃を受ける」、といったもので、「切り上げて困るのは中国に生産拠点を 移している外資系企業だ。その証拠に、日本貿易振興会の調査では、1300社の大多数 が切り上げを望んでいない」と反論しています。この点では、最近日経が行なったアンケ−ト調査でも、「切り上げは自社にとってマイナス」と答えた企業が36%を占め、プラスと答えた企業の2倍以上になっています(2003.9.20日経)。
いずれにしても、ペッグ制下での若干の変動幅の拡大はあっても、完全な変動相場制に移行するのは早くても2008年の北京オリンピックごろになるのではないでしょうか。

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