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 第百五回 立ち退き問題


 江蘇省宿遷市。2002年、市は都市建設の一貫として市内に生態保護区建設を決め、 83戸の住民に立ち退きを要求、立ち退き合意前の同年12月5日、5日以内に家屋を取り壊すよう迫り、その3日後には強制的に取り壊してしまいました。住民達は12月の寒空に放り出され行くあてもなく、工場の廃屋やテント、手直しした豚小屋などに身を寄せました。15日に市から規定立退き料の最低額を支給する旨通知がありましたが、 83戸の住民には引っ越し先の住居も提供されていません。(2003.5.15付人民日報)
甘粛省定西県。2002年6月、李家堡鎮政府は一部地域を"黄金段"(目抜き通り)に指定、住民の保有している土地使用許可証を無視して家屋は取り壊すことにし、元の住民がそこに家を再建築する場合は、1平方メ−トルあたり380元、少ない家でも合計で 6〜7万元を借地料として納入するよう命じました。お金がない住民は、「まず補償金 を支払い、新しい住居に引っ越してから取り壊す」よう要求していますが、政府の順序は全くその逆で、まず取り壊すことが先決。立ち退き補償額も規定をはるかに下回 っているとのこと。(2003.9.11付人民日報)
住民の立ち退き問題に最も関係しているのが中国で今大変なブ−ムになっている開発区。2003年8月現在、全国には3837箇所の開発区があり(国務院認可232箇所、省レベル1019箇所)、総面積は3.6万平方キロと現有の都市建設用地をも上回っています。しかし、実際に開発された面積は15%にも満たず、他は放置されたまま。そして、これらの土地が不当に安い値段で流出し不動産市場に流れ込んでいるのです。住む家も ないまま放り出された住民達がいる一方で、その土地を不正な手段で転がして私腹を 肥やす役人たち…。
先頃国務院は<各種開発区を整理整頓し、建設用地管理を強化することに関する通知>を出し、8月8日から、10チ−ムの特別調査班が全国31の省、区、市に対し土地市場 の査察を開始しました。中華人民共和国土地管理法第47条では、「耕地を徴用する場合は、土地補償費、移転補助費等々を含めた補償費を支払うこと、また、土地補償費は徴用前3年間の平均生産収入の6〜10倍を支払う」などの規定がありますが、ここでもまず、遵法精神の欠如と役人の腐敗が大きなネックになっているようです。

三瀦先生のコラム