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 第百七回 中国のホ−ムレス


 経済の急速な発展で庶民の暮らしぶりもこれまでに無く豊かになり、国民全体が"小康"生活を目指す中国ですが、現代化に伴なう経済の構造調整や企業の合理化により、新しい経済困窮者の出現が問題になっています。大量の余剰人口を抱える農村では、2002年末時点で年収入627元の基準を下回る絶対貧困人口が2820万人を数え、予備人口5825万を加えると9千万人近くにもなりますが、都市部でも最低生活保障ライン以下の人口は同時点で2053万人を数えています。
困窮者の内訳を見ると、"三無対象"(労働能力、面倒を見る者、収入が無い)は僅か5%で、大部分はリストラ人員か、退職金や年金が支給されない、重病になっても医療保険がない、などの社会保障の不備が原因で困窮している者です。そしてこれら困窮者の最底辺を形成するのがホ−ムレスたち。出稼ぎ崩れの人や老人、子供、身障者などで身よりも無い人たちに対して、従来は、1982年に施行された<都市流浪物乞い収容送還法>が適用されていましたが、強制収容的な方法は時代に合わないとして、2003年6月、新しく<都市ホ−ムレス救助管理法>が国務院で採択され、民生部による実施細則とともに8月から施行されました。実施細則第2条によれば、ホ−ムレストとは「食住問題を自分で解決できず、頼るべき親族、友人が無く、都市の最低生活保障や農村の"五保供養"(衣、食、燃料、教育、葬儀)を享受できず、都市を流浪し物ごいをしている者」を指しています。
新法の従来との最大の違いは、自発的な援助申し出を原則に置いたことです。<管理法>第5条では、公安やその他の行政機関の人員がホ−ムレスを見かけたときは支援センタ−に行くよう声をかけ、老人、子供、身障者などには進んで案内をするよう求めてはいますが、あくまでも強制ではなく、本人がセンタ−を出所したい場合はその自由が保障されるようになりました。その一方で、センタ−の居住生活環境の改善により、居座るものが出るのを避けるため、収容日数は10日を超えないことが一応の原則になっています。
<管理法>や細則ではまた、ホ−ムレスに対する不当な拘禁、虐待、使役、金銭的要求、わいせつ行為などが厳に禁止されていますが、ホ−ムレスの人権がどこまで尊重されるようになるか、今後の実質的な取り組みが注目されます。

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