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第1125回 家電業界の話題
(2024年6月27日)
2018年の第13期全国人民代表大会で<国務院機構改革方案>が可決され、従来の文化部と国家旅游局を合体させた「文旅部」(文化と旅游部)が翌2018年4月からスタートしました。ここから“文旅”という合成語が使われ始め、その動きは単に異なる二つの分野の並列ではなく、両者の相乗効果を生み出す方向へと急速に発展し始めましたが、そこにはいくつかの重要な要素が絡んでいました。まず第一は、中華民族の輝かしい伝統文化の継承発展という大目標実現へ向けた、国民に対する啓蒙活動の一環としての“文旅”の提唱です。中華五千年の伝統文化に加え、共産党の思想と業績を喧伝する“紅色旅游”も推進され、交通網や宿泊施設など関連するインフラ整備も精力的に勧められました。
第二は、農村の経済的発展を牽引する働きです。アグリツーリズムの発展は、2021年の小康社会実現に向けた強力なエンジンの一つでしたが、“農家楽”とそれに伴う民宿業の発展だけでは力不足で、より強力な推進力として、各地の伝統・文化と結びつけたツアー“文旅”の実施が期待されました。その後、リーマンショックで、観光を拠り所に貧困脱出を果たした村々も苦境に立たされるに及んで、“文旅”の促進はより切実な課題になりました。また、国全体で見ても、2020年以降の不動産業不振に端を発した経済の低迷を打破する消費政策の一環として、“文旅”重要な意味を持つようになりました。
こうした“文旅”政策の好例の一つが「黄河文化旅游帯」で、2021年には<黄河流域生態保障と質の高い発展計画綱要>が打ち出されました。黄河流域には9つの一級行政区があり、その中には20カ所の世界遺産、84カ所の国家5A級旅游区などが含まれ、非物質文化遺産は649項目に上り、“紅色旅游主要地域”(共産党の足跡)も85カ所に上っています。
翌2022年には<文化産業による農村振興支援推進に関する意見>で “文旅”を重点領域に組み入れる方針も打ち出されました。これにより、各地が地元に伝わる伝統的な習俗・行事を見直しブランド化しようという動きが盛んになりました。2023年に発表された数字では、全国に歴史文化名城が141カ所、名鎮が312カ所、名村が487カ所、伝統村落が8155カ所、歴史文化市街地区が1200カ所、歴史建築が5万7500か所となっていて、まさに国を挙げ“文旅”に突入した感がありますが、さらなる動きとその内容はまた次回に。