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第1127回 生物保護の新発展

(2024年7月11日)

  2021年に、外来生物から国内の動植物を守る<中華人民共和国生物安全法>が正式に施行されたことは、2022年の本コラムで紹介済みですが、その後3年間で、生物保護行政は長足の進歩を遂げています。2023年には改正野生動物保護法が施行されて野生動物の管理保護が一層強化され、時を同じくして<中国生物多様性レッドリスト>(高等植物巻39330種と脊椎動物巻4767種が公表されましたし、翌2023年には青蔵高原生態保護法も施行されました。
 地域性生態保護施策で際立っているのは長江流域です。開発が進んで生態系が危機に瀕した長江では、1919年、182の水生生物保護区で全面禁漁となり、2万1000戸の漁民が陸に上がることを余儀なくさせられました。さらに、2021年には<長江生物多様性保護実施方案(2021-2025)>が通達され、これにより、2025年までには、絶滅危惧種たちの資源保護に目途をつけようという目標が設定されたのです。2020年に、生きた化石といわれるカラチョウザメに関する<上海市中華鱘保護管理条例>が制定されたのはその走りといえましょう。こうして長江の魚類は増加し始め、今では200種近くにまで回復、カラチョウザメでは、2023年に人工ふ化した20万匹が放流され、自然孵化にも成功しています。
 個別の動物の話となれば、まず第一に話題となるのがパンダ。2021年に四川省・陝西省・甘粛省の共同立法により正式にスタートしたパンダ国家公園は総面積2万2000平方キロで、パンダを野生のまま解き放つことこそ真の保護であるという理念に基づき、同保護区内では、陝西省部分だけでも342種の野生脊椎動物が共に生息しています。また、これに合わせて、全国初のパンダ国家公園法廷が四川省臥竜特別行政区内に設けられ、司法面からの保護強化も始まりました。こうした様々な努力は他の希少動物に対しても全国的に繰り広げられており、自然保護に対する習近平政権の断固たる姿勢が見て取れます。
 また、植物面での保護行政も同様に精力的に進められており、1997年に野生植物保護条例が制定されて以来、営々として努力が積み重ねられてきました。2022年には広州に華南国家植物園が設立され、また、北京にも国家植物園開設が認可されるなど、植物保護に対する機運は非常に高まっており、中でも、地衣類や大型真菌などの価値は大いに注目されるようになりました。広大な中国には多様な気候と高低差から生まれる生物資源の宝庫であり、今後の中国のバイオテクノロジー発展にも強力な援護となることでしょう。

三瀦先生のコラム