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第1130回 閲読の奨励と書店経営の多様化

(2024年8月8日)

 アニメやゲームに子供たちが夢中になっている昨今、中国では、習近平総書記が先頭に立って、閲読奨励への取り組みが国を挙げて進められています。2022年の第20回党大会では、「全国民閲読活動」の展開を提唱、2023年には教育部などが<全国青少年学生読書キャンペーン実施方案>を打ち出し、党員・幹部には読書によって心身を鍛えるよう、児童生徒には読書習慣を身に着けるよう呼びかけました。2023年に実施された全国国民閲読調査結果によれば、2022年の国民図書閲読率は59.8%と、ほぼ6割に及んでいます。
 日本では近年、リアル書店の閉鎖が相次ぎ、社会問題にさえなっていますが、中国では、ネット時代におけるリアル書店の在り方について積極的な取り組みが各地で展開されています。北京市では2021年にリアル書店が1万人当たり0.8軒と、2000軒の大台を超えました。その中には、千平方メートル以上の総合ブックセンターが46軒、ショッピングセンター内のブックセンターが111軒、キャンパス内のブックセンターが55軒含まれていますが、書店の形態にも様々な工夫が凝らされています。こうした動きは、2016年の<実体書店発展支援に関する指導意見>以来、年々発展し、2020年は年間で4061軒が様々な工夫を凝らして新装開店しました。中には、従来の書店の概念を打ち破り、書店内でコーヒーを飲んだり、ファストフードを食べたり、書店側が主宰する読書会・音楽会など様々なイベントに参加したりできる書店も増えました。
 書店本来の機能に対しても多様な工夫が見られます。もともと、中国の書店の、日本の書店との大きな違いは、立ち読みが自由なことで、高価な本が買えない学生が、フロアで本を使って勉強している姿をよく見かけます。日本でも最近は一部の書店に読書コーナーが設けられたりしていますが、日本の比ではありません。北京の大興国際空港に開設された書店は8つのテーマ別閲読エリアに分けられて、広い閲読スペースが設けられています。一方、天津市では、外見は喫茶店のような、24時間「都市書房」が設けられ、区内の図書館と連携して、読みたい本を読めるシステムも進められています。書籍の配列についても独創的な形式が次々に出現しています。また、こうした動きは農村にも広がり、工夫を凝らした農村書屋が各地に出現しています。昔懐かしい大型書店が姿を消す一方、中国のリアル書店はたくましく新たな発展を模索しているのです。

三瀦先生のコラム