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第1131回 最近の食の話題
(2024年8月15日)
中国北方の北京料理、東方の上海料理、南方の広東料理、西方の四川料理は、中国四大料理と並び称せられますが、広大な中国では各地に様々な食文化があり、中華街の看板で“鲁菜”とあれば山東料理、“湘菜”は湖南料理、“闽菜”は福建料理、“客家菜”は「客家(はっか)」料理のこと。また、北京料理なら北京タッグというようにそれぞれに代表的な料理があることは、日本でも今日、よく知られるようになりました。改革開放以後、多くのビジネスマンが大陸に赴任し、また多くの観光客が中国を訪れてその味を覚え、昔なら慣れないと敬遠されていた八角や花椒などをはじめとする様々な調味料にも慣れ親しむようになり、横浜の中華街のみならず、街中の中華料理屋も、従来の日本式中華店以外に中国人経営の“地道的”(本場の)中華料理店が急速に増えました。中国人の食も急速に変わっています。日本から持ち込まれた即席ラーメンが急速に全国に普及し、その消費量は既に日本をはるかに凌駕し、2018年には400億食を突破、「康師傅」のような大企業も生まれました。種類も豊富で、各地方の特色が反映され、行く先々の即席ラーメンは中国旅行の楽しみの一つになりました。ただ、気をつけないと大変、筆者も四川省成都市で買った即席ラーメンに添えられていた調味料を不用意にも全部投入したところ、そのあまりの激辛に目を白黒させ、ギブアップしたことがあります。
こうした一方、伝統的な食文化を守ろうという取り組みも盛んに行われています。上述の北京タッグで有名な全聚徳は2022年にメニュー形式を一新し、新たに12種類の料理を加え、北京の文化的風土を濃厚に滲ませつつ、若者のニーズにもこたえる姿勢を見せています。こういった努力は、浙江省紹興の名店、咸享酒店を始め、各地の老舗でも行われています。
中国の食文化に対する庶民の関心も近年急速に高まっていますが、その火付け役になったのが2012年に放送されて大ブームを引き起こした「舌尖上的中国」。単に料理とその味だけを論じるのではなく、中国食文化五千年の伝統精華という観点から、食材・加工・調理法に地方や季節という軸を編み込みつつ紹介し、深い感動を生みました。
古墳の壁画にも調理図が描かれている中国。中華料理に興味のある人は四川省成都の川菜博物館や江蘇省淮安の淮揚菜文化博物館にもぜひ行ってみましょう。医食同源の中国料理文化の神髄に触れられるかもしれません。