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第1134回 出現する新職業

(2024年9月2日)

 経済が低迷する中、若者たちの就職が大きな課題になっていますが、一方で急速に変化する社会形態、スマート化などの影響で続々と新たな職種が生まれ、その人員の育成が喫緊のテーマになっており、これがうまくマッチすれば、就職難解決の突破口にもなりえます。
 2020年代に入り、政府は現代的職業教育体系の整備に俄然注力するようになりました。2021年当時、中国には1万1300か所の職業学校があり、在校生の数は3千万人を超えていました。しかし、規模がいかに大きくても、教育の質が向上しないことには骸骨に花嫁衣裳。
 そこで政府は<現代職業教育の質の高い発展に関する意見>を発表し、先進的製造業・新エネルギー・新素材・現代農業・現代情報産業・バイオ技術・AIなどの関する専門的人材の育成を図る方針を示しました。また、2023年に国務院は<現代職業教育体系建設深化に関する意見>で、従来の固定観念を打破し、職業教育の位置づけを「手に職を」から人材化に、改革の重点を単なる教育から産業教育に置き換え、職業教育を高等教育・継続教育との連携に置くことを提起しました。
 こうした中、2023年、改訂版「国家職業分類大典」が公示され、158種類の新職業が加わって、職業総数は1639になりました。その中には初めて97のデジタル職業がお目見えしました。専門技術者の中には、暗号工学技術者・二酸化炭素(CO2)管理工学技術者、フィンテック技術士なども加えられました。これらの職業分類は職業規準制定の根拠となり、職業教育と人材評価の重要なベースとなります。こういった職業のいくつかを紹介しましょう。
 “人工知能訓練師”は、AI(人工知能)モデルを効果的に機能させるためにデータを準備し、モデルをトレーニングする専門職で、今の中国ではまさに花形。既に中国国内で100万人近いともいわれています。高速道路の普及で、日本のJAFのような、自動車救援員も増えています。車の保有台数が3億2500万台以上ですから、その必要性は計り知れません。その他、食の安全が重視されるようになって、「食品安全管理師」も人気ですし、変わったところでは、高齢者の通院を助ける「職業陪診師」や、「修学旅行指導師」といった名前も挙がっています。これらの技能には5等級~8等級の資格が設定され、これまで以上にモチベーションを高める制度改革も行われています。見方を変えれば、こういった動きはまさに時代を映す鏡とも言えましょう。

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