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第1135回 20期三中全会の分析-その1-

(2024年9月2日)

 2024年7月15~18日、北京で20期三中全会が開催されました。しかし、歴代の三中全会は、党大会の翌年秋に開催されるのが通例であり、そこでは次の党大会までの大方針が示される会議です。したがって、現代史上、各期の三中全会は重要な会議として記憶されることが多く、その代表格が、1978年に開催された11期三中全会、即ち、鄧小平によって改革開放路線が提起された会議であることはよく知られています。 では、2023年秋に開催されるはずの20期三中全会はなぜ延期され、2024年7月の開催になったのでしょうか。それには、経済の低迷が大きく関わっています。
 習近平総書記は、2017年の第二期政権成立以降、国務院の上に党の委員会や指導小組を設置し、トップには自らが就任、弁公室主任には腹心を配置して、経済政策の指導権を確立しました。そのうえで、国有企業をあくまで経済の核心に据え、民間企業や外資系企業 はその補完であるという規制重視の立場を取り、その勢いに乗って、2020年には、大量の不良債務を抱え、経済危機の元凶となっていた不動産業界に思い切ってメスを入れ、不動産開発業者に対して債務比率を規制するとともに、銀行に対して住宅ローンと不動産開発業者向け融資の「総量規制」を指示しました。これによって民間不動産大手は経営不振に陥り、経済は大打撃を受けました。結果として2022 年以降、「共同富裕」政策は一時的に後退。、同年末の中央経済工作会議では、不動産開発やプラットフォーマーに対する規制を一時的に緩和せざるを得なかったのでした。
 こういった経過と、アメリカを中心とした西側諸国の経済包囲網に対処するため、習近平氏は2024年秋までに中国人民銀行総裁を易綱氏から行内国際派のリーダーで、 ケンブリッジ大や米ハーバード大で研究歴のある潘功勝氏に、 党中央財経委員会トップを劉鶴氏から、福建省勤務時代の部下で、腹心中の腹心である何立峰副首相に交代させる人事を行いました。こういった主要な経済担当者の入れ替えのせいで、その直後にすぐ三中全会を開くことは事実上不可能になりました。しかし低迷する経済への対策は待ったなしですし、2024年は、第14次5ヵ年計画の最終年を翌年に控え、第15次5ヵ年計画の立案にも取り掛からなければならない大事な年でもあります。7月の開催はまさにぎりぎりであり、それゆえに内外からもどのような方針が打ち出されるか注目されました。

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