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第1139回 20期三中全会の分析-その5-

(2024年10月10日)

 [第五章マクロ経済ガバナンスシステムの整備]では、①国家戦略のマクロ的な指導、総合調整機能を強化 ②専門家の公共意思決定への参加制度を健全化 ③財政・金融・産業・価格・雇用などの政策の協調力の発揮 ④国家のマクロ資産負債表管理実施の探索 ⑤高品質な発展を支える統計指標計算体系を健全化を挙げていますが、重要なのは、財税制度改革を深化させるために列挙された以下の14の項目です。
 1.行政権力・政府信用・国有資源資産に依拠して取得される収入をすべて政府予算管理に組み入れる。2.予算の公開と監督制度を改善する。3.直接税体系を健全化し、個人所得税制度を改善、事業所得、資本所得、財産所得の税制政策を規範化し、労働所得の統一課税を実施する。⇒中国の所得税制度は、給与所得・個人事業所得・財産譲渡所得・株式配当や利子所得などを対象とした象累進課税制度で、基本的な免税額は月収の5,000元。医療費、住宅ローンの利子、養育費などについては控除が認められていますが、高所得者の税逃れが顕著で、税務監査の厳格化、高所得者に対する税制の強化が課題になっています
 最も注目されるのが以下の地方財政に関する指摘です。
 4.権限と責任が明確で、財政力が調整され、地域間の均衡が取れた中央と地方の財政関係を構築。5.地方の自主財政力を増強し、地方の税源を拡大し、地方の税収管理権限を適度に拡大。⇒地方の税源の拡大は収入の確保につながり、公共サービスの提供やインフラ整備などの地方行政を強化できます。ただ、これによって地方政府の役割分担を明確にし、地方の自治と自立性を高めるとは言うものの、管理の仕方を誤れば、地方の恣意的運用と、地方への責任の押し付けにもつながりかねません。
 6.財政移転支払制度を改善し、特別移転支払を整理し、一般的な移転支払を増加、市と県の財政力と責任の一致を高める。⇒特別移転支払の整理とは、特定の目的や条件に基づく特別な財政支援を見直し、必要に応じて整理(削減または再構成)することを意味し、一般的な移転支払の増加とは、地方自治体への一般的な財政支援を増やすことを意味します。市と県の財政力と責任の一致の向上とは、二級行政府である市や県に財政権限と責任を集中させて、地方政府が自らの財政状況に応じて政策を実行しやすくすることが目的です。
 この続きは次回の最終回(その6)で。

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